『ある日の日常〜お風呂事件編〜』
〜その1〜
「お風呂、誰からでもいいから入っちゃってー」
「はーい。じゃあ僕入ってきます〜!」物語は唐突に始まる…。
まるでお母さん(本人は嫌がるだろうが)のようなことを言うハズミ君に、カナタが素早く答えて風呂場に向かったのだ…。
そう広くもない(ずばり言うと狭い)湯船に、ほどほどに水が張られている風呂。
「枯ーれーなーいー花はーうつーくーしーく〜てぇ〜♪」
思いっきり音の外れた歌を歌いながら、カナタはシャワー(意外にもあったりした)のコックを捻った。
その瞬間。
「っぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!;」
漫画的に言う、家が揺れ動くような悲鳴が上がった。
「えっ!?何??」
「ひょっとして、アレでも出たのかな?」
「ああ…アレ、嫌だなぁ。」
「何にしても、近所迷惑だよ…」あんにゃろめ!などと言いながら、ハズミ君が風呂場の方に顔を出すと(ちなみに他の五つ子は動かなかった)、頭にタオルを被り、下にズボンだけ履いたカナタがプルプルしながら出てくるのが見えた。
「シャ、シャワーが水しか出ませんっ…!;湯船も水です!!;」
「………………え?」
「お風呂が壊れましたーーーーーー!!!!!;」
ここに、デュナン家の危機が訪れた。
〜その2〜
「どーすんのさー!あ〜もう修理費だって馬鹿にならないっていうのにさー!」
「ユイ兄は?」
「今日は遅くなるって、」
「いくらユイでも、風呂釜までは直せないんじゃない?」
「つーか僕の心配して下さいよ!(怒)風邪引きますよー!?う〜;この辺銭湯ってありましたっけー!?;」当然銭湯などない。
別に入らなくても死にはしないが、運動部所属の者が多いこの家では、少々辛い事態だ。「水風呂とか?」
「…止めといた方がいいですよ;慣れてる人でないと、心臓止まりかねません!;」
「やかんで熱湯作って入れよう!」
「バカー!何言ってんの!?光熱費がかさむでしょーが!」ピンポーン…。
(何故か)通路でギャーギャー揉めていると、ふいにチャイムが鳴り響いた。
「げっ。カナタが騒ぐから近所から苦情が来た!?」
「僕のせいじゃないですよー!(怒)」
「はーい、今出ます」また喧嘩が始まりそうな2人からレン君は離れ、スルリと玄関へ向かった。
「あれ。」
「こんばんは…夜分にお邪魔します、」
「こんばんは〜」そこにいたのは、意外な人物だった。
「あの…悲鳴が聞こえて…、何かあっ「カイルさーんvvv」
たのかと思って、という言葉は途中で遮られた。
そう。
半裸のカナタが、突撃したからだ。状況が掴めなかったカイルは、思わず硬直してしまった。「「まったー!!」」
ガッ。ゴン!
レン君が足を引っ掛け、ハズミ君とリク君がカナタをふん捕まえた。
見事なまでの連係プレーだ。「そんな格好で抱きついたら訴えられるよ!?」
「そうだよ!1人で良い目の合わせて堪るかー!」
「何ー!?人の恋路を邪魔するヤツは馬に噛まれて死んじゃいますよー!?(怒)」ギャースギャース!
「えっと…?;」
「馬に蹴られるんじゃなくて、噛まれるんだったっけ??」
「…カイルさんも、ヒロさんもすみませんでした。お隣まで悲鳴が聞こえましたか?」レン君は、自分の家の恥を黙殺する事に決めた。
「ううん。コンビニにおやつ買いに行った帰りに通りかかって聞こえたんだよ?」
「そうだったんですか。あの、実はお風呂が壊れて…」
ナナト君からこれこれしかじかと説明が行われた。(その間も3人は揉めている)
「そうだったんだ…」
カイルが小さく頷き、ふと1つ提案をした。
「あの…じゃあ、内のお風呂を使う?」
「え!」
「うん。うちも今からお風呂だから、ちょうどいいと思うよ?」
「いや、でも…その;」迷惑なんじゃ…;とユーリグさんが…;のどちらを口にしようかと悩み、レン君とナナト君が口ごもった僅かの時間。その間にカイルとヒロさんの表情が、「何か迷惑な提案しちゃったかな…」と不安に曇った…。
「―――是非です!」
「「「「あ。」」」」
混戦を光の速さで突破し、カナタは(どさくさ紛れにカイルの手を握り締め)即答した。
…この事態こそ、真の危機の訪れかもしれなかった…。
〜その3〜
「「「おじゃまします〜…」」」
「「おっじゃましまーっす!♪」」引きつったり困ったりした表情を浮かべる3人とは対照的に、2人ほどはとてつもなく嬉しそうな様子だ。しかし、5人ともお風呂セットを抱えているといった共通点はある。…あるだけだが。
「…どうも、こんばんは? 2人から話は聞いてるよ?」
どことなく、ラスボス並みのオーラを発して玄関先に立つユーリグさんの姿は、とても恐ろしいものだった…。
顔は笑っているが、態度で「帰れ!」と思いっきり示している。「いや、本当にすみません!お風呂が急に壊れたもんで…! いや、入らなくても死なないって事はわかってるんですけどね!?;」
「うんうん、そうだよね?」にこにこにこv
顔で笑って心で般若。
まさにそれだ。「…まあ、こちらから誘ったんだし、どうぞ上がって。」
ため息をつくと、いやいや中を示してユーリグさんはスリッパを並べてくれた。
「さすがに14人も入るんだし、一度お湯を変えようと思うから、先に入ってくれる?」
「いえ、そんな…借りるのはこちらなんですし、後で――」
「僕らの残り湯に君達を入れると?」
「…すみません。」ピンポイントで犯罪者(変質者とも言う)予備軍が2名いる為、レン君には謝る事しか出来なかった。
恨めしげにその2名を見てみると…
「あ、早かったね…、今湯加減見たけど、ちょうどいいぐらいだったから、どうぞ?」
「わーvカイルさーん♪ありがとうございます〜☆ 是非、僕といっし…」
ドスッ。ゴッ。
「?;」
レン君(笑顔)の肘鉄が脇腹に、そしてハズミ君(笑顔)の手刀が脳天に入り、カナタは声も出せずに悶絶した。
…辛うじて、ユーリグさんに気付かれる前に、処理できたようだ。
ナナト君が安堵の息を吐いた時、「あ。」
「ユーリグさん!あのっ僕と一緒に裸の付き合いをして親睦などを深め――ゲフアッ!!」
…土下座するまでの騒ぎになった。
〜その4〜
「2、3人くらいなら一度に入れるから、さっさと入ってきてね。」
イコール、「早く帰れ」
(現在帰宅中の)マクドール兄弟総出で宥められ、(ハズミ君談:ユウさんが帰宅しててほんと良かった!!)何とか入浴の許可が下りることとなった。
「うわっスゴ!;」
「これなら5人いっぺんでも入れましたね〜;」
「さすがにそれだとぎゅうぎゅうになると思うけどね…;」同室の人間(別名隔離チーム)3人が、呆然と風呂場で立ち尽くす…。
「家のお風呂で足伸ばして入れるなんて思いませんでした…」
「僕も…」
「気のせいか、なんか良い匂いするような…(///)」リク君が思わずぽつりと零す。
「せ、石鹸かシャンプーの匂いだよ」
「…カイルさんも使ってるシャンプーですかね…(どきどきどき) というか、このお風呂…マクドールさん達1人ずつ入ってるんでしょうか…それとも…?」
「…な、何歳くらいまで一緒に入ってたのかな…引っ越す前になるんだろうけど…」「「「………」」」
微妙な沈黙。
「…何想像してるんですか☆ハズミさんのムッツリー!!」
「そうだよ!ハズミのムッツリ!」
「えー!?何言っちゃってんの!?ていうか、お前らが言うなー!」言った者勝ちな争いが勃発した。
「そう過保護にしなくても大丈夫だと思うぞ?」
「アレに関しては、過保護とかそう言ったレベルですみません…」まだ少しピリピリしているユーリグさんを、ユウさんが宥める。
「ユーリグさん、お茶入れたのでどうぞ…;」
皆も、とカイルはフォローするようにお茶を配る。
残りの4名は…「ナナト、さっき買ってきた新発売のお菓子食べる?」
「わ〜ありがとうございます!」
「こんな時間に会うのって、珍しいよね。僕もとっておきのおまんじゅう出してくるね」
「え、いいんですか?」とりあえず、ユーリグさんはリク君に気をとられている為、2人(別名:安全チーム)は平和かつ幸せに過ごせていた。
お風呂場からはにぎやかな声が聞こえてきており(内容までは聞こえない)、カイルはそれを楽しくお風呂に入っているのだろうと考え、のんびりと自分もお茶を口に運んだ。
〜その5〜
「上がりました〜♪」
そう時間は経たない間に、3人はお風呂から上がって来た。さすがに人様のお風呂では長風呂は出来まい。
「ドライヤー、使う?」
頭をタオルでガシガシ拭いているカナタを見て、カイルはそう声をかける。
「うちじゃ自然乾燥ですから平気です♪」
「でも、まだ濡れてるし…風邪引くかもしれないよ?」
「じゃあ、カイルさんが乾かしてくれるな…らぁア”−−−−−!?;」
「カナタ君、不用意にカイルさんに近付かないでくれる?」
「あだーーー!!;千切れますーーー!!;身が千切れますーーーー!!;」
「ああっ!カナタだけズルイ!?「ズルくないです!!(怒泣)」ユーリグさん!カナタより僕とお話しませんか!?お風呂場で考えてたんですけど!ユーリグさんは何のシャンプーを…ふぎゃら!;」
「ユーリグさん!;落ち着いてください…ユウさん!ユウさん!;」何にどう突っ込んでいいのか分からなくなったカイルは、パニック状態でユウさんに助けを求めている。カイルには止めきれないようだ。
「あーあー…うちの愚弟共は迷惑かけてくれちゃってさ〜…」
男泣きをしそうになっているハズミ君は、そう呟きながらも、騒動の起こっているリビングには近付かないでいる。(正しい判断)
騒動が治まるまでは、ここで待機しようとぼんやりと立っていると、玄関の方からか細い声が聞こえた。「た、ただいま……」
お客さんが来てるの?と、そろりと家に戻ってきたのはルレンさんだった。
「お、お帰りなさい、ルレンさん。お邪魔してます…」
「えっ!ハズミが来てたんだっ……あの、こんばんわ……」あわあわと慌てるルレンさんに釣られ、ハズミ君も少しどもった。
「ええっと、うちの風呂がですねっ壊れまして、それでルレンさん家のお風呂を借りに来たんですよ…!」
「お風呂?」きょとんとルレンさんは首を傾げた。
その視線は、ハズミ君の持つお風呂セットに注がれている。(…ような気がする。厚底眼鏡の下からの視線はどうにもつかみにくい)「だから、お風呂セット持ってたんだ……」
納得したようにルレンさんは頷くと、ふいに小さく笑みを溢した。
「ルレンさん?」
「なんか…不思議だね、ハズミがうちのお風呂に入ってたって言うの…!」にこにこ。ふわふわ。
綿菓子みたいに笑ったルレンさんの様子に、ハズミ君の(何かが)きゅーんと来た。(ように周りからは見えた)
「…ハーズーミーくーんー?」
「ぎゃあああああああああ!!;ゆっユーリグさん!?;」
「お帰りなさい、ルレン兄さん、お疲れ様です。」
「たっただいま、ユーリグ……」
「ハズミ君にはすこーし、うちの玄関先で何をしてたのかとか聞きたいので、ちょっとだけお借りしますね?」
「えっ??ハズミとはおしゃべりしてただけだけど……??」…神経過敏になっているユーリグさんに、ついにハズミ君まで捕らえられた…。
「いいなぁハズミ…!ユーリグさんに襟首掴んで貰えるなんて…!」
「それはリクさんだけですよ!…ハズミさん、南無です…」しかし。
これは今日一日だけのこと…デュナン家のお風呂が直るのには3日の期間を要し、その間この騒動は続くのであった…。
ユーリグさんの精神に、そして2主の身体に幸あれ!
終
〜おまけその1〜
「どうもー、うちの愚弟共が風呂借りに来てるって聞いたんで、来たんですけども。」
「ああ、こんばんは。ユイも来たのか。」
「ああ、さすがに俺でも水風呂に入る気はないからな…てか、アレ何があったんだ?」
「ユーリグか…色々あってな、」精神が高揚しすぎてぐったりしているユーリグさんと、物理的にグッタリさせられた弟3人…。
なんともコメントしがたい光景だった。(ちなみに、ユーリグさんが落ち着くまではと他のマクドール兄弟は自室に退去させられている。)「そう言えば、今はレンたちが風呂を使ってるぞ、一緒に…」
「断る。」キッパリ。
まだレン君とナナト君という2人の為、転がっている弟らと入るよりはマシなのだろうが、いい年して家族風呂は嫌だという思いがひしひしと伝わる。「そうか、なら2階のシャワーを使うか?今から入ろうと思っていたんだが、先を譲るぞ?」
「いや、それは悪いだろ。…何なら、間をとって一緒に使うか?」勿論冗談で言った。が。
「僕は別に構わないが?」
「マジでか。……て、」…ユイ君の視線の先には、ぐったりとしながらも、瞳だけが異様に殺気を放っているユーリグさんの姿があった。
まるで、討ち死に寸前の武士のような気迫だ。「…(ユーリグが死にそうだし)冗談だよ。」
「そうか。」
(ユイ君&ユウさんはこんな感じと勝手なイメージ…>笑)
〜おまけその2〜
『アオイさんへ (>ω<)
お風呂壊れたんで、マクドールさんの
所に行ってます☆
今日はお風呂に入ってから帰って来
た方が良いかもです♪
BYカナタ 』「………」
パチンと、アオイ君は携帯を閉じた。
今日はモデルの仕事で、いつもより帰宅が遅くなっているようだ。
それも、1人ではなく隣には(昼の残り物の)お弁当を、嬉しそうに食べているマクドール家の兄弟の1人クラハさんも居た。
どうやら、偶然仕事のスタジオが同じになったらしい。「家から何か連絡が?」
「いや…」ほっぺたにゴハン粒をつけたクラハさんの問いかけに、アオイ君は首を振って答える。家の風呂が壊れているらしいので、今日は風呂屋に行った方が良いらしい、と。
「この辺りに風呂屋があるのか?」
「…健康ランドみたいなものがはやってるみたいだから、あるんじゃないか?」
「キリンのお風呂か。」どことなく地方ネタを言っているような気がするが、この際それは無視しよう。(※製作者の地元に、かなり昔からあるお風呂施設のネタだ。利用客は殆ど老人の施設である。)
「良ければ付き合うが?」
弁当を3つ平らげて機嫌が良さそうなクラハさんは、健康ランド=風呂上りの牛乳という公式に、瞳を輝かせてそう提案した。
「え…」
「行かないのか。」
「…ああ、じゃあ行こうか、」
「うむ。」そういうことになった。(笑)
何だかんだで2人して簡易温泉施設に行く事になったが………確実に目立つ事この上ないだろう…。
(この話の中で一番不幸なのは誰だろう…?>笑 1.リク君 2.ハズミ君 3.ユーリグさん …ファイナルアンサー?>爆)