『ある日の日常〜出会い編〜』

 

「好きです!!僕と結婚を前提に付き合ってくださーーーいvvvvv」
「え?……………………ええ!?;」

初めての町…初めての家に、引っ越してきたばかりの…その日の話だった。

 

「よいっ…しょ、」
「それで最後かな?」
「はい、」

軽い衣類の箱を持ってカイルは、自分と三つ子の兄の1人に頷いて見せた。
他の兄弟達は各々に荷物を運び込んでいる所で、自分と兄だけが外に残っていた。
兄のユーリグさんは、先に新しい家の中へと進み、カイルもきっとこの後声が聞こえて来なければすぐに後に続いていた事だろう…。

「ぎゃーー!;遅刻です〜〜〜!!;」
「お前が3人分の目覚まし止めるからだろォーー!!」
「カナタ酷いよ!(泣)僕らまで巻き添えにするなんて〜〜!!」
「だって魔王が…魔王がッ…!今夜中に僕に倒して欲しいって言ってたんですよーーー!!(怒泣)」

「……………」

高校生らしい子らが隣家から飛び出して走っていく。
脇目も見ずに走っていくその姿は、かなり慌てている様子がありありと分かる。…何せ、もう時刻は9時に近い…完全に遅刻している時間だ。
元気だなぁ…と足を止めて、走っていくその姿を見ていると…――――ふと、一番最後に走ってきた、他の子よりも短い学ランを着た少年がカイルの近くで立ち止まった。

「…?」
「―――――」

何だろう?と、カイルが首を傾げた瞬間…

 

「え…ええ…?;」

突如、初めて会った少年から告白を受けたカイルは固まっていた。
それにも構わず少年は、話を続けていく。

「あ!僕カナタです!名前教えてください〜!」
「えっと、カイル…です??;」

何故か混乱して「です」までつけている。
名前を聞かれるという事は初めて会ったということで…??と、いう疑問が相手にも伝わったのか、にこーvとまだ残っている子供らしい笑顔を見せて言った。

「一目惚れですv」
「〜〜〜〜〜(汗)」

カイルは混乱した。何かが違う。何が違う…と考えた結果、ふとした事に思い当たった。

「あの…僕、男なんだけど;」
「気にしません!!好きです!!」

あっさり。

「……………(汗)」
「それとも!僕の事嫌いですか!?(泣)」
「えっ…;そんな事は…;」
「じゃあっ付き合ってくれますか♪」
「えっと…;」
「ダメなんですかッ!?(涙)」
「〜〜〜〜う…ん;」

混乱する中…コロコロと変わるカナタの表情に押し負けて、カイルはついつい流されるまま頷いてしまった…。
その途端、少年はとても嬉しそうな表情で笑った。

「わーーーい♪♪じゃあ今日から恋人です〜〜〜♪♪僕隣の家に住んでるんです!また今日でも明日でもデートしましょう〜〜〜♪♪」
「…う、ん」

そんなに嬉しそうに笑顔を見せられては、もうカイルには(今更)断る事もできなかった。カイルもつられるように、小さな微笑を零す。

「えへーv荷物持ちましょうかvv??」
「ううん、大丈夫だから…でも、君「カナタですv」…カナタ、あの…学校に行かなくていいの?」
「あ”。」

すっかり置いていかれて硬直した少年を微笑ましく思い、ついついカイルは笑って言った。

「頑張ってね、」
「っはいvv」

実際この時少年は、学校なんてサボっても構わないと思っていたらしいが、カイルの微笑みにすっかり悩殺されて俄然行く気になった。

 

「カイルさーんvv行って来ますー♪」と手を振る少年を姿が見えなくなるまで見送り、カイルはようやく手に持った荷物に気がついた。

「入って来ないけど…何かあった?」
「あ、ユーリグさん…」

神の思し召しか…タイミングよくユーリグさんが扉を開けて、カイルに尋ねる。…もう2分でも早ければ、マクドール邸の門前で血の惨劇が催された事だろう…。
カイルは少し考えて、どう言えばいいのかわからないという結論を出し、首を横に振った。

「いえ、今から行きます」

―――――この日、このタイミングが、本当に運が良かったであろう数分間の出来事であった事は…この一週間後少年自身が、身をもって知る羽目になるのだった。