『ある日の日常その7』

 

 

デュナン家リビング…。
そこで今、破滅のメロディが鳴ろうとしていた…。

 

トントントン、とリズミカルな包丁の音が響く台所。
居間では誰ともなく見ているテレビのバラエティ番組の笑い声と、お菓子をつまむ音が聞こえる。
そんな些細な日常の音の中、聞こえて不思議ではない音が混ざった。

ブブブ…

そう、携帯の振動音が、テーブルの上で鳴った。
それだけならば、何の騒動も起こらなかっただろう。

『E Le Vu Sha Ki La Ku Pa Di Ma To Ka Lei♪ PoPo Loouise♪ PoPo Loouise♪』

「あ、マナーモードに戻し忘れてました。」

携帯の着信音らしい、着歌が居間に広がった。…と、同時に台所から包丁の音が絶えた。
『サボテンの花が咲く季節にまた逢えるまた逢おう…♪』ピッ、と、その携帯の持ち主…カナタが手元を操作し、音が消える。

…が、それは少し遅かった。

「ねぇ、カナタ。それってルレンさんの声?」
「ですよー。声っていうか、歌ですけ…「なんでカナタがルレンさんの着歌持ってんのさぁああああ!?」どぉおおおお!?;」
「わーー!!;ハズミ包丁持ちっぱなーー!!;」
「ギャーー!!;トラウマがーーー!!;」
「家の中で人死に出さないでね。」

一気にデュナン家居間は、家族団欒の図から地獄絵図に早代わりした。

 

 

で、10数分後…
カナタは、居間で布団に巻かれて転がっていた。

「べ…弁護士を呼べです…っ!;」
「却下!」
「え?なんでこんなことになってるの?;」
「いや、カナタが自室に逃げ込んで布団の中に隠れたんだけどさぁ…;」
「そこをハズミが捕まえたみたい。」

強制家族会議だ。
何故だか洗濯叩きを持ったハズミ君が、転がる末っ子の前に仁王立ちしている。

「で。なんでカナタがルレンさんの着歌持ってて使ってんの?」
「なんでって言われましてもー;単純に、ルレンさんからのメールの着信音に設定してるだけですよ?あ、僕とルレンさんメル友なんで。」
「メル友ー!?;」
「ハズミ〜落ち着いてー!;」
「ハズミそんなに叩いたらっ…!;」

簀巻きバシバシは、拷問である。

「ハズミ、落ち着いて。ユイだってルレンさんとは友達だし、カナタとメル友になってても別におかしくないって」
「だっ、生歌ーー!!メル友ーー!!」

もはや何に自分が反応しているのか、自分でもよくわからなくなったハズミ君(半泣き)だ。

「そりゃ選曲は僕の趣味ですけど!;普通にお願いしたらもらえましたよ!?ハズミさんもお願いしたらいいじゃないですか!!」

 

それが出来れば苦労はしないし、ムッツリと呼ばれることもない。

 

「うが――――――――ーっっ!!(怒)」
「ぎゃあああああああああああ!!!!;」

「ハズミが血涙流して叩きまくってるーー!!;」
「布団から凄く埃が出てるっ!!;」
「はぁ…;ハズミー今日の夕食作り代わるから、明日もやってね?」

そんなこんなで、ハズミ君の気が済むまでデュナン家では悲鳴が上がり続けた。

 

 

 

で、次の日。

さすがに懲りたのか、カナタは携帯を自室に置き、今日はノートパソコンを手に居間に座っていた。
リズミカルな調理音、バラエティ番組の声、タイピング音…平穏である。

「………(よし、今日は携帯持ってないね。)」
「……………」

カチャカチャカチャ…!

 

カナタ>聞いてください〜っルレンさーん!(c>_<ノ) 昨日、拷問体験しちゃいました〜!
ルレン>えええ?拷問??
カナタ>こう、布団で巻き巻きされて、バシバシ布団叩きで叩かれるんです!(>皿<)ノシ
ルレン>それって楽しい、の?

 

…そして、ハズミ君が2人がメッセ仲間でもあることを知るのは、まだ先の話である………。

 

 

 

おまけ。

「当然カイルさんからのメールも、生ボイス設定です♪聞かせるのは勿体無いんで、大体携帯マナーモードにしてますケド。」
「へ〜ていうか、色々音ファイルあるけど、これ何?」

ピッと、リク君が一つ選択してみると…

―――『やっ…恥ずかしいからっ!カナタやめっ…録らないで!!もうちょっと待って…っ…!』

「カイルさんの悩殺NG集です。」
「……………これ、色々問題あるんじゃ…(滝汗)」

でも、最終的に着ボイスをもらえたらしい。