『突発!ヒーロー物!?その□□□話』
今日も今日とて、少年は念入りに策謀を巡らせていた。
そう、喩え授業中にノートの片隅に「人質!→ボコボコ♪→勝利☆」と走り書きをしただけであっても、立派な策謀なのだ。誰が何と言おうとも。多分。
「さー!今日はというか今日も悪役らしく人質を取って卑怯千万に戦いますか〜!今日のターゲットはそこらを通りかかった人に決定です!!」
まさに無差別的犯行だ。
「とか言ってたら早速人影が!手っ取り早く押さえますよ〜!」
そういうと、黒いフード付きマントにパンヒーローのお面をつけた少年は、気配を頼りに影からその人影へ飛び掛った。
「!!」
「すみません!身体に害はありませんし、終わったらきちんと安全な場所で寝かせておきますから!」たっぷりと睡眠薬の染み込んだ布を押し当てられ、通行人は抵抗する暇もなく意識を失う。
カクンと力の抜け落ちた身体を、しっかりと背後から抱えると…ようやくそれが誰なのかが判明した。「……………あれ?;」
「……………」そう、お隣のマクドール家長男、ユウさんだった。
「な…なんか呪われでもしてるんでしょうか…っ!?;」
おろおろと辺りを見渡した後、少年はバレなければOK!;と背中にユウさんを背負って、良さ気な場所へと移動を開始した。
工事中やら立ち入り禁止やらの立て札が出入り口に立ち並ぶ公園、その片隅で今まさに戦いの火花が散っている。
「わあっ!!;」
「マーントぉ!!」とりゃー!とばかりに、明らかに人ではないのに人型をした何か(紫のマントを装備している)に襲い掛かられ、リク君…もとい、不幸マン(仮)は慌ててソレを回避した。
今回の敵からの攻撃は、ダメージ的にというか、生理的に嫌だからだ。「人質を開放しろ〜!;」
「おおっと!動かない方がいいですよ!その人質がどうなってもいいんですか!?」不幸マン(仮)の言葉に、敵対する少年はそんなことを言い出した。
そして、その言葉は確かに効果があった!不幸マン(仮)は慌てたように動きを止めた。「えーっと…(どうしますか…;)」
「…………(な、何する気なんだろっ…;)」ドキドキと両者は見合い、人質に視線を注ぐ。(怪人紫マントは見た目に反して礼儀正しく、その間は大人しくしていた)
ベンチに横たえられたユウさんは、まさしくスリーピングビューティな様子である…。「………」
ごそごそ。
懐を探る。
…何故だか羽根ペンが出てきた。…こちょこちょ、
「ん……」
羽根の方をユウさんに向けると、頬の辺りでわさわささせてみる。
ふさふさ、
「んん…」
今度は、耳の辺りもふわふわと触ってみる。
スル――
「っん…、……」
首の方にそっと滑らせて見ると、ピクッと目蓋の辺りが震えた。
眠っているとは言え、外部からの刺激には反応を見せている所を見れば、ユウさんがとても敏感なことがわかる。「………擽って安眠を妨害をしますよ!!?」
「な、何か悩ましげー!!;」こうして、不幸マン(仮)は、手出しが出来ない状況に追い込まれてしまった!というか、そんな光景を見せ付けられていると、青少年の精神状態に悪い。
「ふはははははは!不幸マン(仮)め〜!人質の安眠を確保したければ!そのまま怪人紫マントにボコボコにのされるといいです!!」
「くぅっ!!;微妙にユ…人質に気遣って小声なとこがムカつくー!;」ぽかぽかのお日様の元で、ベンチで眠っているユウさんは(たとえ擽られていようとも)とても平和な様子だった。
…隣にパン頭のヒーロー面をつけた不審者が居なければ、絵にしてみたいような光景だ。
しかも、近くで紫のマスクやマントを付けた生物に、我らがヒーロー不幸マン(仮)がボコボコにされているのが、かなりシュール過ぎる。「さあ!これ以上メタメタにされたくなかったら!正義のヒーローをやっている理由と目的と物証をキリキリ吐いてもらいましょうか!!」
「クッくそうっ…!!;」これ以上ないと言うぐらいに、分かりやすくピンチな状況だ。
そして、言っている少年も「これが三流悪人…!マズイです!癖になりそうなくらい楽しいです…!でもこれ死亡フラグですか!?」とノリノリである。が、そんな時。
―――ギュオオオオオオオ…!!
と、激しい爆音が響き、両者の下へバイクが近付いて来ているのがわかった。「何者ですか!?」
「あ、あれは!」黒いライダースーツを着た男が、脇目も振らずに不幸マン(仮)のピンチに駆けつけて来たのだ!
勿論、黒いヘルメットを着用している為、顔等は全く分からない。
すわ!形勢逆転かと思いきや…―――黒いライダースーツの男は、不幸マン(仮)ごと怪人紫マントを轢きにかかった。「「「ギャーー!!;」」」
思わず敵も味方も関係なしに逃げ惑った。
物凄い腕前の持ち主なのだろう、地面擦れ擦れまで身体を倒して最小限の距離でターンを決めると、ザザッとユウさんの前で立ち塞がるように3人(2人と1体)と対峙した。「ちょっアレ味方なんですよね!?;」
「そっその筈なんだけどっ…そ、そうだよね!?ユ…あーうー…ブラックライダー!?;」何だかバッタのヒーローのようだ。
そのブラックライダーと呼ばれたバイクの主は、ドドドドドド…とアイドリング音が響く中、黙ったまま仕草で答えた。親指をまず、首元で横で切ると、
続いて地面に向けてその親指を下ろす。→ ↓
KILL YOU。
…人気のない公園に、2人と1体の絶叫が轟いた………。
「ん……んん?」
「よう、」ふっとユウさんが目を覚ますと、そこは公園のベンチの上で、隣には何故かユイ君が座っていた。
「ここは…?」
寝起きだからか、少し幼い仕草で辺りを見回すと、ユウさんは自分がどうしてこんな場所で寝ているのかと疑問に思った。
「近所の公園」
「ユイはどうしてここに?」言葉少なく答えるユイ君に、ユウさんは当然の質問を返す。
「バイクで散歩してたら、あんたがここで気持ち良さそうに寝こけてたからさ。変なのに絡まれないよう、隣に座って見張ってた」
「そうか…」疑問符が頭に一杯飛んでいるが、こんな天気の良い日だからついつい散歩中にベンチで居眠りをしてしまったのだろうと、無理やり結論付けた。
…少々納得が行かずとも、何の記憶もない上、実害もなかったのだから仕方がない。「なら見ていてくれた礼に、そこの自販機でいいならコーヒーでも奢らせてくれないか」
「おう」
辺り一面に走るタイヤの跡と、地面を掻き毟ったような手形や、人体が引きずられたような痕跡には気付かないまま…2人は短くも平和な逢瀬を楽しんだ…。
そしてデュナン家。
「うわっ!!;リクそのタイヤで轢かれたみたいな跡どうしたのさ!?」
「バイクに轢かれました…;」
「轢き逃げ!?;」
更にマクドール家。
「ギャーー!!わざとじゃないんですーー!!;これ以上の負傷は――――…!!;」
以下略。
(ユイ君の勧誘は勿論、しっぽ頭さんの脅…手によるものですv
今回のピンチもしっぽ頭さんからの連絡で駆けつけました☆>笑)