『ある日の日常〜夏の水泳編〜』

 

 

「アオイ兄ちゃん〜…お腹痛いから今日学校お休みします〜〜;」
「大丈夫か…?何か変な物でも食べたのか…」
「昨日、アイス5本とよく冷えた1リットルジュースとかき氷2杯とスイカ半分食べました〜」

 

―――プール開き当日の話である。

 

 

夏、体育、カナタの水泳の出席率が0%のままだった。
そろそろ補習を受けても、授業数が足りない。

「なんで出ないのさ!?;」
「泳げないから嫌なんですよ!!(怒)ビート板とか恥ずかしいです!」
「泳げるように授業に出て練習すればいいと思うんだけど?;」
「練習しても泳げるようになりません!!(怒)大体うちから5人中4人も出席してるんですから!サービスで僕1人分の出席くらいつけて下さいよ!!(怒)」
「無理だよ!!;」
「ええいっ!!とにかくッ僕は逃げますよー!!例え通信簿で体育1になったとしてもーー!!」
「あっコラ…ッ!」

 

そして、体育教師からじきじきに水泳に連行するように言われた5つ子(−カナタ)は頭を抱えていた。
別に放置していても構わないだろうという意見は、教師からの連帯責任という言葉でなくなった。

「どうする?」
「どうするって言われてもさ…;」

うーむと頭を抱える4人。
それが出来れば苦労はしないのだ。

「…無理矢理連れて行こうか、」
「「「うん」」」

まあそれしか手段はない。

 

 

「あー!なんかお腹が痛くなってきました!!」
「プールにもトイレあるから大丈夫だよ!レン、薬!」
「はい」
「…あーー!水着忘れてきちゃいました☆」
「ナナト、持ってきてるよね?」
「うんっカナタの分もちゃんと持って来たよ!」
「…逃げるが勝ち!!」
「逃がすかぁーー!!」

 

…そんな訳で。

 

「…いっそ殺せです…」

この夏初めて、デュナン家5つ子がプールサイドに揃った。

「大げさな…;」
「泳げる人にはわかんないんですよ…この屈辱は…」

怨念が宿る瞳で睨まれ、クラスメイトらはうわぁ…;と目を逸らした。そんな怨嗟の瞳に耐えられるのは身内くらいである。

「いいから準備運動しなよ」
「…いっそ足つって保健室送りになってやります…」
「そんな風に言わなくても…もう少し頑張ろうよ?」
「頑張れません!!てか頑張っても泳げないから嫌いなんですよ……ふ、ふふふ…!;」

ナナト君の言葉にどんよりとカナタは答える。
そして、カッ!と目を見開いて断言し始めた。

「後!焼けた床で足がじりじりするのも!塩素臭いのも!殺されるかと思うくらい冷たいシャワーと消毒も嫌いです!!」
「はいはい。皆嫌いだから準備準備。」
「先生、休んだ数×200m水泳で出席だけはなんとかしてくれるって。」
「僕に死ねって言うんですかっ!?僕は嫌ですよっ!泳ぎませんからねっ!?」

ぎゃーぎゃー!と暴れるカナタを、背後からハズミ君が取り押さえ、レン君がビート版を無理矢理手に握らせる。

「クラスメイトが1レーン快く僕らに開けてくれるって…;」
「お、押し付けられた…っ!;」

その光景を見ていたクラスメイトは、兄弟らに向かって全員で合掌するのだった。

 

 

「ちきそうです…っ!クラスで泳げるヤツは全員足つって溺れればいいですっ…!(怒)」
「カナタ…呪わないでよ;」
「大体、泳げないからって授業サボる?普通? 授業代だってタダじゃないんだからさぁ…」
「ええいっ!今は何も聞きませんよッ!!」

んがーっ!とカナタはビート板にしがみつきながら威嚇の声をあげる。
浮き輪までも持ち込んでいるというのに、その身体は今にも沈みそうだ。

「ハズミだって頑張ってるんだから、カナタも頑張ろうよっ!」
「ハズミさんは水に沈まないじゃないですかっ!?(怒)」
「どっちも異常体質だよねぇ…;」
「泳げようが泳げなかろうが授業には出なよ。」

正論である。
そして、今まで黙っていたレン君がゆっくりと口を開いた。

「―――もし、カイルさんが海とかプールで溺れたらどうするの?」
「…頑張ります…」

ぶくぶくと水中で息を吐きながら、カナタは観念した…。(そして、周りからレン君に拍手が捧げられた。)

 

 

 

しかし、翌日の水泳の時間…。

 

「ええいっ!!カイルさんと水辺のデートをする時には酸素ボンベと救助用の浮き輪を持ち歩きます!!だから水泳の授業は出ませんよーーッ!!(怒)」

再びデュナン家5つ子バトルは開催された。
そして、この戦いは水泳の授業が終わるまで続けられるのだった…。