『ある日の日常〜過去のバレンタイン〜』

 

 

バレンタイン。
それは、男所帯であるデュナン家にとっては、もらう側(一部除く)としてのドキドキ(?)イベントである。

 

「ただいまですー」
「おかえりーって、その袋全部チョコ!?」

意外かと思われるが、デュナン家末っ子は案外チョコ獲得数が多かったりした。

「―――そうです。調理室の前を通りかかったら、試作品チョコをもらいました…」
「微妙だね…;」
「羨ましいとは思わないなぁ…;」

全部が義理チョコ(以下)なのは言うまでもないが。

「というか、失敗チョコを押し付けられた気配ですよ…」
「それ何?」

とぷんと透明のビニールの中で揺れるのは、茶色い液体…―――まさか。

「油脂分かなんかが分離したチョコです!捨てるのが勿体ないそうで!」
「う、うわぁ〜;」

引きつり笑いでナナト君は目をそらす。

「で、どうするのソレ?;」
「まあ勿体無いんで、ハンドミキサーでガーッって混ぜてクリーム状態まで復活させます…;」

 

ハズミさーん!タルトの生地作ってくださいー!自分で作れー!…というやり取りの後、台所を占拠してしばし…。

 

チョコタルトへと復活させられた失敗チョコが、夕飯までのおやつとして、そっとテーブルへ並べられた。

「う”っ!;」
「焦げ苦っ!?;」
「あ〜…多分キャラメルと思われる、失敗した何かが混入されてますねー…元々本命チョコ用らしいんで、材料は高いの使ってるのに…」

 

まあ、味は試作品故に全体的にアレな感じだったらしい。