『ある日の日常その3』
「ハズミさーん。ハズミさ〜ん。僕のDS知りませんかー??布団の上に置いといたんですけどー」
それは放置していたんだと、突っ込む者もいないある日の2主家。
末っ子カナタは、そんな呑気な事を言いながら同室の兄弟であるハズミ君を探していた。
夕食の支度にはまだ早いものの、ハズミ君がいるのならば台所だろうか?と当たりをつけて、少年はのろのろと台所を覗き込む。「あれ?いません??」
うーむ。と腕を組んで首を傾げるものの、狭い台所にわざわざ隠れているはずもない。
しかし、台所内にはとても良い匂いが充満しており、確かに居そうな気配もする。「トイレでも行ってるんでしょうか?―――あ☆」
カナタがテーブルの上を覗き込むと、良い感じにクッキーが皿の上に盛られていた。
そして、躊躇なくそれに手を伸ばす。「今日のおやつですよねー♪」
ぽりぽりぽりぽりぽり…
ジャンガリアンハムスターさながらに、頬に詰め込む少年の姿はまさに動物だ。
彼は、2主家での食事は弱肉強食の世界だと認識している。その為、食べられる物があると発見すれば躊躇なく自分の割合分を、胃の中に詰め込んで確保する。「ん〜vおいしいですー。この量だと…4分の1くらいは食べても大丈夫ですよね!」
全然大丈夫な事はない。
一体どういう計算をしているのだろか…。カナタがつまみ食いをして怒られなかった試しはない。(でも懲りない)
―――――しかし、その少年が硬直する事態が発生した。
「…んんん?」
…クッキーの盛られた、花柄の綺麗な大皿の横に…メモがあった。(メモといっても、シンプルかつ可愛らしいメッセージカードが使われている。)
「……………(汗)」
じっとりとカナタの額から、脂汗が流れ落ちる…。
そう。そこには、こう書かれていた…。
『 ユーリグさんへ
試食した感想、是非聞かせてくださいね。
ハズミより 』
「……………(滝汗)」
ぽりぽりぽりぽり…ごっくん。
口の中に詰め込んでいたクッキーを飲み込む。「けふ。………マズイです…。」
味ではなく、行為が。
カナタはだらだらと汗を流しながらも、冷蔵庫に張り付いているマジックに手を伸ばした。
そして、メモに文字を書き付ける。
『 ユーリグさんへ
試食した感想、是非聞かせてくださいね。
ハズミより
このクッキーは僕が頂きました!!
BYリク!
』
…思いっきり自分の筆跡で書きなぐった。
「ふう!!;コレで暫く誤魔化せますね!!;」
――――バタンッ、
「!!(汗)」
どこかでドアが閉まった音が響いた。
―――その途端、カナタは家の外へと飛び出す。
自分でも、そんな事で誤魔化される相手2人ではないとわかっているのだろう。完全な時間稼ぎの為の偽装に過ぎない。「ひぃいいいいいいいい!!;カイルさーーーん!!カイルさーーーん!!;どうしましょうーーーー!!(泣)」
絶叫しながらも、カナタは素早く携帯を操作して、カイルへと連絡をとった。
※ ※ ※
「何があったの?;」
唐突に、助けを求めてきた年下の恋人(一応。)を部屋に入れながらカイルは首を傾げる。
…ちょうど、ユーリグさんは出かけている所で、全くのノーチェックで自室まで来れたのだ。『助けてくださいーーー!!;ムチャクチャマズいんですーーー!!(泣汗)』
と、携帯に出て第一声で告げてきた少年は、今はカイルのベッドの中に丸まって隠れている…。
とりあえず部屋に来てもらったものの、このままでは全く埒が明かない。そんな訳で尋ねたのだが…「や…;それがですね…;僕が悪いって事は分かるんですけど、ついつい偽装工作っていうか、シャレにならないことしちゃって…その責任をどう逃れ――もとい、とったらいいのかがわからなくてですねー…;あ〜カイルさんの布団良い匂いがします〜」
「……………(汗)」それでも、よくわからない。
(最後の言葉は聞き流す事にして、)カイルはとにかく相手を落ち着かせようと、ベッドの端に座って問いかける。「何か、したの…?」
「…ふ、ふふふ…;それが、ハズミさんの作ったおやつつまみ食いしたら、ユーリグさんに差し入れする分だったんですよ…;」
「つまみ食い…;」
「しかも、割と食べちゃったんで誤魔化しようもないです!;」
「…謝ったら、ハズミ君も許してくれると思うよ…?;」
「……………偽装工作で、リクさんの仕業って事にしちゃったんで、もう後には引けない状況になっちゃってます………」
「……………(汗)」それはどう考えても、カナタが悪い。
しかも、怒られるのがイヤで逃亡してしまったとなると、余計に問題だ。「…別に、謝るのが嫌とかそんなんじゃないんですけど〜;こう、勢いって言うか流れって言うかですー…;」
「うん;」
「ああ〜…;リクさんも怒ってるでしょうね〜っ;」
「…多分…;」
「……………………………カイルさん。―――――今晩泊めて下サイ。」
「う…―――え?;」さすがに、頷く前になんとか気付いた。
「クローゼットで!!;クローゼットの中でいいんです!!;匿ってください!!;ハズミさんの怒りが静まるまでーーー!!(滝汗)」
「そんなに怒られるのが嫌なの!?;」
「嫌なんですよーーー!!;ハズミさん怒るとしつこいですしー!しかもリクさんも怒ってるでしょーしー!!;ゴハンも抜かれちゃうかもしれませんし!!静かにしてますからーーー!!今日だけーーー!!;」
「それは多分ムリだと…っ;一緒に謝ってあげるから…!;」
「NO−−−!!;あのグリグリ攻撃には逆ギレするしか逃れる術はないんですーーー!!」わー!ぎゃー!と揉めながら、布団を捲ろう捲くらせまいとの戦いを繰り広げる…。
―――当然、そんな騒ぎが部屋の外に漏れない訳がない。
「……………」
「「あ;」」
「…ケイさんとヒロさんから、部屋の中で大声がするって聞いて来たんだけど…」
何してるのかなぁ…?(ベッドの上で)
殺気。
「ぎゃーーーー!!;やっぱりクッキー食べたから呪われたんですーーーーッッッ!!」
「え?え?えええ??;(混乱)」
刃物だけは持ち出されなかったが、誤解が解けるまでの間に割と物凄い負傷を負ったカナタだった…。
ちなみにその後、当然のごとく自宅でも(「てめーこのアホンダラー!!つまみ食いしたならしたで、こんなあからさまな犯行声明でリクに擦り付けるなー!このアホー!」「酷過ぎる〜ッ!!濡れ衣着せるなんてーー!!」と、)取っ組み合いの喧嘩が待ち構えていた。
終