「誕生日おめでとう」
「おめでとうー」
「おめでとうだな」
「おめでとうございます」
「おめでと〜」
「…おめでとうございます」

 今日は3月7日。マクドール家末っ子ヒロの誕生日だ。リビングのテーブルにはユーリグとカイルが腕によりをかけて用意したご馳走が並べられており、ヒロはお祝いの言葉を受けてユーリグお手製のケーキに立てられたろうそくの火を吹き消した。

「あ、ありがとう皆。…何か嬉しいね、兄弟皆揃って祝ってもらえるのって」
「そうだな。これで引っ越してから皆の誕生日を兄弟全員揃って一通り祝えた訳だ」
「来年はお隣さんも呼ぼうか、きっともっと賑やかになるよ」
「せ、せっかくの家族水入らずなんですし、それはちょっと………あぁ、そうだ!そろそろご飯にしましょうか。今日はヒロさんの誕生日ですし張り切って作ったんですよ、さっきからクラハ兄さんがお待ちかねみたいですし」
「うむ。遠慮なくいただこう」
「いただきます…」

 ユーリグの合図とクラハの華麗な箸捌きから夕食が始まり、ヒロの誕生会は始終和やかなムードだった。ご馳走に誕生日ケーキも食べ終えて皆がそれぞれにくつろいでいると、ソファーに腰掛けているユウの前に今日の主役であるヒロがやってきた。

「ねぇ、ユウ兄さん。1つ聞いてもいい?」
「何でも聞いてくれ、相談になら乗るぞ?」
「あのね、ユウ兄さんも僕と同じで同い年の兄弟っていないでしょ?」
「まあ僕の場合はロウと誕生日が1週しか違わないから。ロウも兄弟のようなものだし、いるとも言えるが…」
「そっかぁ。じゃあ僕だけなんだ、誕生日に1人なの」

 せっかくの主役がおめでたい日に溜息をついている。ユウはヒロを隣に座るよう促し、ヒロが腰を落ち着けたところで静かに問いかけた。

「どうして1人なんて言うんだ?今日だって皆いるじゃないか」
「そうなんだけどね。12月はルレンとクラハ兄さんの誕生日だったでしょ。先月はユーリグ兄さんとケイ兄さんとカイル兄さん。皆は何かお揃いでいいなーって思って」

 そう言ってヒロは羨ましそうに他の兄達を眺めていた。確かにルレンとクラハは双子、ユーリグ、ケイ、カイルは三つ子ときていて、兄弟の中で1人で産まれたのはユウとヒロだけになる。一般的には双子や三つ子の方が珍しいのだが(お隣には五つ子なんていう更に希少な例もあるが)、ヒロにとっては自分の兄弟の方が気になるのだろう。せっかくの誕生日に拗ねている理由が思いのほか可愛かったため、ユウは微笑んで少し寂しがり屋な末っ子の頭を撫でた。

「ヒロ、良い事を教えてあげよう」
「え、何?」
「確かにお祝いをされるのは1人だけかもしれない。だが、1人だとお祝いをしてくれる人達を独り占めにできるんだぞ?」
「独り占め?」
「そう。今日は皆ヒロだけのために、こうしてお祝いをしてくれているんだ。それって良いと思わないか?」
「…あんまり良く分からない」

 首を傾げているヒロの頭をよしよしと撫でながら、ユウはぎゅーっと抱きしめてやる。ユウに抱きしめられてヒロが少し照れていると、その姿を見つけたケイが混ぜて欲しそうに近付いてきた。ユウはヒロの耳元でちょっと見ているといいと囁いて、変わらず抱きしめ続けた。

「あー、ヒロいいな。僕もくっついていい?」
「ケイ悪い、今日は駄目。今日はヒロが主役なんだから、ヒロにだけなんだ」
「えー、そういう事ならユウがずるい!僕もヒロをぎゅっとしたいー。ヒロいい?」
「う、うん…」
「やった♪じゃあくっつくー」

 ユウからバトンタッチされて、ヒロは今度はケイに抱きしめられていた。ケイの肩越しにユウと目が合ったヒロは、悪戯っぽく笑う長兄の顔を見てようやく『独り占め』という言葉の意味を理解した。その後、ヒロはケイに連れられて兄達に代わる代わるぎゅっと抱きしめられる事となった。兄弟全員に抱きしめられ終えて解放されたヒロは、頬を紅潮させながらユウのところに戻ってきてぽすんとソファーのユウの隣に収まった。

「どうだった?」
「うん、独り占めって凄く良いね」
「だろう?」

 ヒロの回答にユウも満足そうに頷き、2人は顔を見合わせて笑った。

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