「あれ?」
リクが遅めの風呂から上がってくると、もうとっくに寝ていたはずのカナタが起きだして、眠そうにしているハズミと頭をつき合わせて、地図や雑誌とにらめっこをして騒いでいた。


「どうしたのさ?何で起きてるの?」
髪をタオルでガシガシ拭きながら訪ねると、少し涙目になったカナタが真剣な顔で訴えてきた。

「夢で、ユーリグさんに首を刺されたとこで目が覚めたんです〜〜。そうしたら、明日のデートコースを健全な物に練り直さないと落ち着かなくなっちゃって…。」
「僕は眠いんだけど…。この調子で寝かせてくれないんだ…。」
このバカナタめ!と、ゴインとカナタの頭を小突きつつも付き合っているハズミは本当に人が良いと思う。
夢で刺されたって事は……

「そっかー。夢でユーリグさんに会えたんだ…。良いなぁ…。」
ポソッと呟いた一言に、カナタが過剰なまでに反応してきた。
「良くないですよ!!殺される夢なんですよっ!?」
「リク…、それ内容を考えても羨ましい夢じゃないよ?」
ハズミまでボクを変なモノでも見るような顔をしている。

「夢でも良いから会いたいってそんなに変??」
「だから、その相手に殺される夢なんですからっ……まあ、いいです。リクさんはそういう人なんだって思うようにします…。」
「…?そういう人って、それどういう意味?」
わけがわからないと、カナタを見ているとハズミがやっぱり微妙な顔をしてこちらを見ている。
「まぁ、うん…。きっとリクは知らなくても問題ない事なんだよ…。」
疲れた顔でこちらを見る、カナタとハズミに馬鹿にされた気がしてムッとする。
「だって、ユーリグさんってガード堅いでしょ? それだけ至近距離で顔が見られるなら羨ましいんだってば!!」
「リクさん…強く生きてください…。」
「うん、頑張れ…。」
なぜか同情された上に、2人同時に肩をポンっと叩かれた。
何か釈然としない物を感じる…。


「それはそうと、明日のデートコースですっ!!、この間近場は案内したので、遊園地なんか良いと思うんですけど!!」
「ああ、デートの定番コースだよねー。アトラクションって何気に距離が近くなるし。
 閉園間際の花火なんかを 2人で見上げるのもムードが出るしねー!!」
「でも、あれだけ健全なお付合いって釘を刺されたんだから…。閉園間際の花火が売りの遊園地とかは行けないんじゃない?」
「帰りって何時までなんだろうね?門限とか確認した方が良いんじゃないの?」
「そういえば、まだ門限があるかは確認してないですねー。でもカイルさんももう寝ている時間だと思いますし。」
「映画は?それとか、何か展示会を見に行くとかさー。今何かやってなかったっけ??」
「却下です。カイルさんの好みがまだわからないですから、嫌いな映画や展示物だったら印象が最悪になります!!」
「じゃあ、常時展示物が変わらない、美術館や博物館は?」
「あー、その辺なら…。ただ、静か過ぎると僕が落ち着かないんですよ〜。」
「動物園は?あれもデートの定番コースでしょう?」
「確かに、カイルさん動物関連は好きそうですねー。でも僕の存在が忘れられる気がしてなんとなく嫌です。」
「注文がうるさいなー…。夕方までに帰って来られるコースって、大体その辺でしょう!?」
「リクさんには、あれだけ脅された僕の気持ちはわかりませんっ(泣)!!
 そもそも明日は遊園地で『ある程度の関係』に!!って思っていたんですよーーーっ!!」
「そんなんだから、殺される夢を見るんだよっ!!!!」
「仕方がないじゃないですか!!好きになったんですから!!手を繋いだり、ちゅーくらいはしたいって思うのは男として当然の心理ですーーーっ!!」

ドガンッ

ぎゃーぎゃーと騒いでいると、隣の部屋からユイが壁を蹴った音が響いてきた。
思わず、一瞬で静まり返る…。


「えーと、じゃあどうするの?」
「帰宅が遅くなりそうな遊園地は、今の段階ではやめておきなよ?命が惜しいなら。」
再びハズミに釘を刺されて、カナタは考えこんだ。
「……そうですね。お弁当を持って、大きめな公園にでも行ってみます。日曜ですから催しでもやってるかもしれませんし。」
「そういや、隣町の公園で蚤の市をやるって聞いた気がする…。」
「それですね! カイルさんの好みも量れてちょうど良いかもしれません!!」
ひそひそ声になりながら相談を続行していたのだが、思わず大きい声を出したカナタに慌てる。
「バカ!声がデカいっ!」
「またユイ兄にどやされるよ!!」
しーっと口の前に指を当てて、辺りを伺う。
どうやら今のはセーフだったらしい。隣室に繋がる壁からは何も物音がしてこない。

「ま、コースも決まったみたいだし、寝ようよ…。」
もう限界だと、あくびをしながら布団に入ったハズミを見て、リクもそれに倣う。
そんな2人を見てカナタも布団に潜った気配がしたが、リクの眠気も限界だったのか、その後の事は記憶にない。



ただ、起きたらハズミとカナタはとっくに起きていて。
雨になればいいと呪ったのに、かんかん照りの良い天気と、お気に入りの自分の服が消えているのに溜息を吐くだけだった。


「ボクもいつかユーリグさんと、一緒に出かけられるくらいになりたいなぁ…。」
バイトに行く準備をしながら、デート中の末っ子を羨ましく思い呟いた。





END