澄んだ青空。ポカポカ陽気。流れる風が心地良い一日。

今日は珍しくマクドール家兄弟全員がお休みなので午前中のうちに家事を片付け、午後はみんなでゆっくりする予定です。

ゴウンゴウン・・・・。ピー!

「よし、二回目の洗濯終り!あとはこれを干せば今日の分は終わりだね」

カゴに脱水の終わった洗濯モノを入れて二階のベランダへ運んで行くのは末っ子のヒロ。今日の洗濯当番だ。

♪〜♪♪♪〜♪

ヒロが階段を上って行くと聞こえてくる優しくて心地良く響く歌声。

ベランダの外には風に揺れる柔らかい髪と小さな後ろ姿。その美声の主であり、もう一人の洗濯当番、我らが歌姫、次男のルレン。洗濯モノを干しながら、とても楽しそうに歌っている。

ヒロがベランダの窓を開けるとそれに気付いたルレンが振り返る。

「あ、洗濯おわり?あとはそれ干したら今日は終わりだね。」

「うん」

カゴをベランダに置き二人肩を並べ、残りの洗濯モノを干し始める。

「ねぇ、ルレン」

「なぁに?」

「久し振りにルレンの歌聞けたなーと思って。もう歌わないの?」

「え?あ、さっきは、気がついたら歌ってて・・・」

「ルレンの歌、とっても上手で聞いてて心地いいよ。僕、大好き。それに歌ってる時のルレン、とっても楽しそうだもん!ね、もっと歌って?」

「えと・・・そ、そうかな・・・ありがと・・・」

恥ずかしそうに俯いて少し髪をいじるとルレンはふっと思い付いたように顔をあげる。

「あ、それじゃ、ヒロも一緒に歌おう?」

「え?」

「その方が楽しいよ。ね?」

まるで子供のようにあどけなく笑うその笑顔にはとてもかなわない。むしろウチの兄弟でこの顔に敵う者などいるのだろうか?こんな時、ついヒロはルレンが兄ということを忘れそうになる。しかし実際あんまり兄とは認識していないのも事実だけれど。それだけこの家の兄弟達は家族であり、そして友達のように仲が良い。


一方、台所では

「よし、こんなものかな?お昼は買い物組が買って来てくれるし、あとはゆっくりできそうだね」

口の回りのシチューを指でツイと拭き取ると、くるりと向きを変えるのはエプロンの似合う四男ユーリグ。家族を支えるしっかり者。もちろん料理はお手のモノだ。

「さてと・・・・」

夕飯のシチューを作り終え、掃除担当の様子を伺いにリビングへ向かう。

部屋に入ると窓の方に二人の姿が見えた 。

「あ、ユーリグさんお疲れ様」

足音に気付いて声を掛けるのは気配り上手なおっとりさん。六男のカイル。

「今日の夕飯はシチューかな?いい匂いがする・・・・」

それに続いたのが長男ユウ。ものしり博士でマイペース。

すっかり綺麗になったリビングとピカピカに磨かれた窓のおかげか部屋全体がいつもより明るく見える。

「うわ〜。すごい!部屋がとっても明るいよ!今日は一段と気持ち良く過ごせそうだね」

「ホント?嬉しいな。二人で頑張ったからね」

カイルはそう言うとユウと目を合わせる。

「あ、でも、二階のベランダのところの窓だけ拭いて無いんだ」

「そこだけならすぐ終わるし僕も手伝うよ」

三人そろってベランダに向かうと、どこからともなく歌声が聞こえてくる。

「あ・・・」

「歌声だね・・・」

「これって、ヒロとルレンじゃないかな?」

階段を上がり、ベランダを覗き込むと二人が楽しそうに歌っている。

「あ・・・もしかして、声、大きすぎた?」

真っ先に気付いたのはルレン。ヒロも続いて振り返る。

「いや、ベランダの窓も拭いてしまおうと思ったのだけど・・・」

答えたのはユウ

「そうしたら二人の歌声が聞こえてきたからさ」

その後ろからひょっこり顔を出すユーリグ

「・・・もう、歌わないの?」

最後にカイル。

「おーい!誰かいないのかー?」

「さっきまで声がしてたような気がしたんだけど」

バタンとドアの音がして残りの買い物組二人の声が聞こえてくる。どうやら帰って来たようだ。

「あ、じゃあ僕、下に行って買ったモノをしまうの手伝ってくるから窓おねがいします」

ぱたぱたとユーリグは階段を下りて行った。

「じゃあ僕らも手早く片してしまおうか」

「うん」

ユウの言葉にカイルがコクリと頷く。

二人のテキパキとした作業。水拭き空拭き、息のあった連携プレーであっという間に窓の掃除は片付いた。

ルレンとヒロの洗濯も終わると、また階段を上る足音が聞こえた。

「そっちは終った?」

ユーリグが様子を覗きにきた後ろにはなぜか買い物組二人の姿もある。

「うん、あれ?終わったならリビングで休んでていいよ?」

ヒロが不思議そうに聞き返すと

「いや、さっきユーリグから聞いたんだけど」

「お前達が楽しそうに歌ってたみたいだから私達にも聞かせてもらおうかと思ってな。な?ルレン」

質問に先に口を開いたのは五男のケイ。真面目なスポーツマン。甘い物、特に饅頭には目が無いという可愛いとこもある。それに続き答えたのは三男クラハ。気ままな食いしん坊。

「え、あ、うん、でも・・・」

ちょっと照れくさそうに俯くルレンを横目にヒロがポンと両手を合わせる。

「ね!それじゃあみんなで歌おうよ!」

「え?みんなで?」

目をパチくりさせるユーリグ。

「歌・・・歌えなくはないけど」

少し驚いたようにケイ。

「・・・歌なんて久し振り過ぎて大丈夫だろうか・・・」

少々困ったようにユウ。

「私は構わないが」

アッサリとクラハ。

「えと、・・・僕も?」

ちょっとオロオロするカイル 。


「ね、ね!ルレンもそう思うよね?」

「・・・うん。みんなで歌えたら、楽しいよね・・・ダメ?」

「ね?歌、歌おう?」

マクドール家アイドル、ルレンとお兄ちゃん大好き末っ子ヒロからのお願いダブルアタックときたらもう無敵に近いかもしれない。


そして兄弟はアッサリ落とされたのだった。


「じゃ、いきます・・・」

♪♪〜♪♪♪♪

ルレンの指揮を筆頭に兄弟全員で奏でる温かいハーモニーはすべてを優しく包み込むように響く。



日差しの気持ちいい昼下がり、洗濯モノもリズムに合わせ、風にはためいていた。

BACK