「知りませんでした〜。カイルさんも七人兄弟だったんですね〜」
「うん、すごい偶然だよね」
「偶然というか、運命を感じるですー!
 というわけでカイルさん!『祝お引っ越し☆ようこそお隣へパーティー』をしましょう!!」
「……へ?」

 

††

「……いや無理だろ」
 自身の名案にうきうきしていたカナタに返ってきたハズミの答えは冷たいものだった。
「えー、なんでですかたかだか14人分のゴハンも用意出来ないってんですかこのむっつり。」

ごいんっ。

「誰がむっつりだこのバカナタ!!
 ……考えてみなよ、ユーリグさんがGO出すと思う?」
 カナタの脳天にゲンコツをくれてからハズミが嘆息する。
「そこは大丈夫ですー!先にカイルさんを説得してあります!兄を射んとすならまず弟からですー!!」
「よしんばOK貰えても、ウチに14人入ると思うか?ぎゅうぎゅうに押し込めたらメシ所じゃなくなるだろ?」
「う、……そ、それはそうですけど〜……」
 最近飲食店でバイトを始めた兄の説得力のある発言に、カナタの肩が落ちる。
 ……その時だった。

「……カナタ、携帯鳴ってね?」
「あ、鳴ってま……カイルさん!お待たせしました〜!!」
 電話の相手は、どうやら件のカイルらしい。
「はい!……はい………はい?」
 一瞬、疑問符を浮かべたカナタが、ちろっとハズミを見遣る。
「それは大丈夫だと思います。寧ろ喜ぶんじゃないですかね」
「あ?」

「……ユーリグさん、条件付きでOKくれたそーです」
 電話口のカイルに丁寧に別れを告げたカナタがぱたん、と携帯電話を閉じた。
「えぇっ、ウソマジ!?」
 カナタの言葉に、ハズミが目を見開く。
「で、条件って?」
「ウチではなくマクドールさんのおうちでやる事、だそーです。
 ……アウェーよりホームのが戦いやすいと踏んだんでしょうねー」
「……やるの、パーティーじゃなかったっけ?」

 

†††

『ふぁぁぁぁ………!!』
 感嘆のため息がハモる。
「でか!広ッ!新築だから当然だけど綺麗っ!!」
「……ついでに結構凝ってますよ、オーブンなんか業務用なんじゃないですかこれ」
「業務用といえば!!ユーリグさんユーリグさん!!冷蔵庫開けていいですか!?」
「開けっぱなしにしたらダメですよ?」
『はーい!!』

 当日。
 昼からのパーティーに備えて、ハズミとレンは2時間程早くマクドール邸を訪れていた。
 無論、支度を手伝う為である。
「あー!なんか自動で氷作る奴!店にあった!!」
「つーか冷凍庫デカいですよ、アイスリットル入りのが入っちゃってますよなんか!!」
「あああー!なんかケーキ型ものっそい量あるんだけど!!ああ、鉄製のシフォン型だぁ〜いいやつだァ〜…」
「うわー!!ハズミ見てください!なんか銀食器とかありますよ銀食器――!!」
『すっげぇ!!』
 何故か「なんか」を連呼してはしゃぎまわる二人に、ユーリグがぱんぱんと手を打つ。
「はいはい、見たいならまた後で見せてあげますから、そろそろ支度始めましょう?」
「あっ、そうですね」
「でもものすごい充実っぷりですね……ユーリグさん、お菓子も作るんですか?」
「あれ、言ってませんでしたっけ?僕、製菓やってるんですよ、学校で」

ぴし。

「……うわーん!!」
「あッ、こらハズミ!!」
 突然、持参した荷物を持って脱走を図ろうとしたハズミを、慌ててレンが捕まえる。
「何も逃げなくてもいいじゃないですか!」
「ヤだよ!本職の前で素人仕事晒せるか――!!」
「……え、何、何か作ってきてくれたんですか?」
 突然の事にぽかんとしていたユーリグが、ようやく状況を飲み込む。
「パーティーったらケーキだろ、って、ハズミとタルト作ったんですよ。
 ……それ、僕も作ったんですから!勝手に持ってかないで下さいっ!」
 尚もじたじた暴れるハズミを踏みつけ、レンが平たい箱を取り上げた。
「だって〜、だって〜〜……」
「へたくそだからっていきなり殴られたりはしないから!……多分!!」
「えッ、君達の中でもしかして僕ってそういう位置づけなの……?」


「いやぁ、二人とも手際いいですねぇ」
 時計が正午に差し掛かる頃には、予備のテーブルまで出した台所に所狭しと様々な料理が居並んでいた。
「こんな広い台所で、いい材料沢山使ってたっぷり料理出来て……!幸せでした……」
「ハズミはちょっと行き過ぎですけど、僕も楽しかったです。色々覚えられましたし」
「こっちも勉強になりました。……君たちホント無駄なく使いますね」
「同じ価格なら、少しでもカサ増やさないとソンですし〜」
「とにかく量必要ですからね、ウチは」
「その姿勢は、僕も見習うべきかな。さて、後は………あ。」
 仕上げにかかろうと、体を翻したユーリグが冷蔵庫を目に留める。
『どうかしました?』
「いや……飲み物、そういやなかったな、と……紅茶やコーヒーはあるんですけど、大人数だしペットボトルの大きいの、幾つかあったほうがいいですよね?」
 ユーリグの言葉に、ハズミがポケットの携帯電話を引っ張り出した。
「あ、それならウチで待機してるヒマ人達に行かせます。……あ、もしもしアオイちゃん?あのさー、何人か連れて飲み物買いに行ってくんない?……そうそう、あっちのが安いから。……えっと、モノはなんでもいいですよね?」
「え?あ、うん、おまかせします……」
「はい。……もしもしー、いいよ好きなの買ってきて。でもなるべくいろんな種類買ってよね?あ、僕緑茶欲しい緑茶」
「アオイ兄ー、烏龍茶もー」
 レンがハズミの肩口から顔を出して、電話口にリクエストを告げる。
「これでOKです。帰って来るまでまだ少しありますから…もう一品くらいいけますよ」
「ハズミ……単にここの台所使いたいだけでしょ……」
 ぱたんと携帯電話を閉じ、イイ笑顔を浮かべるハズミにすかさずレンがつっこむ。
「どこかに、安いスーパーあるんですか……?」
 が、ユーリグが食い付いたのは別の箇所だった。
 この辺りは、流石台所主、といったところか。
「はい、チャリでちょっと行った所に、業務用のを小売してる店があるんです」
「量買える上に安いんで、商店街より遠いんですけど僕らよく行くんです」
「今度、教えて貰っても……いいですか?」
「勿論いいですよ!」
「秘密の穴場とかも、内緒で教えちゃいますよ!」
 自分達の知識が美貌の隣人の役に立つのが嬉しいらしい二人は、にこにこしながらあれやこれやと話し始める。
「……あ、じゃあ携帯、教えますね」
「いいんですか!?」
「わーい!交換交換♪」
「……でもいい?これは君達二人に教えるんですからね?間違っても弟達には教えちゃダメですからね?」
「…………わかりました」
「つか兄はいいんですかね兄は……」

ハズミ&レン 本日の収穫

 広いキッチンでゼータククッキング(二時間)
 料理豆知識(製菓寄り)
 ユーリグの携帯番号&アドレス(レアアイテム)


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