「それでは〜、皆さん揃ったようですので始めたいと思います〜!」

 両家兄弟七人ずつが揃い、料理や飲み物が並べられた所で、一番端に座っていた(長男から順に座っているため)カナタが、オレンジジュースの入ったグラスを掴んで立ち上がった。
「まずはオーソドックスに乾杯ですよね〜。じゃあユウさん!!音頭とりお願いします〜!!」
「……僕が?」
 最年少のカナタから(ついでに席も一番遠い)突然振られ、ユウは目を瞬かせた。
「はい!こーゆーのは一番エライ人にお願いしませんと〜」
「……僕は別に偉くはないのだが……」
「折角のご指名だ。やってやるといい」
 困惑するユウを促したのは、二つ隣に座る、涼しげな風貌の持ち主・三男のクラハだった。
「……では……僭越ながら。」
 照れ臭さに頬を染めながらも、ユウは自身のグラスを小さく掲げた。
「……乾杯。」

『かんぱーい!!』


「よーこそお隣へですよマクドール家の皆さん!!一堂に介するのは初めてですから、改めて紹介したいと思います〜☆僕は末っ子のカナタです〜。趣味はいろいろ、薬学に興味があります〜。あ、食べながら聞いてて下さい♪」

 乾杯が終ると、すかさずカナタが仕切りモードに入る。
「他にも秘密はありますけど、それはまたおいおいです☆え〜では〜…」
 ちゃっかり自身の紹介を一番に済ませてから、兄弟の紹介に入る。
「一番向こうのが我が家のイイ男No.1、一番兄ちゃんアオイさんです〜。モデルのバイトもこなすモテモテさんです〜☆」
「……アオイです。……弟共々よろしく」
「続いて2番兄ちゃん、ユイさんです〜。一人だけ違う高校に通うアウトローなあんちくしょうです〜。因みに手より足のが早いです〜」
「やかましいカナタ。……一応工業高通いなんで、機械関係困ったらどうぞ?」
「三番兄ちゃんレンさんです。寝ると起きません。そういう意味では一番要領いいかも知れませんね〜我が家の台所番Aです」
「あはは……因みにこちらに新聞届けてるのも僕です、今後ともご贔屓下さると嬉しいです〜」
「四番兄ちゃんハズミさん。我が家の台所番Bで、一言でいえばヘタレのムッツリです。皆さん気を付けて下さいね〜☆」
「……カナタお前明日から一週間弁当ナシな!」
「五番兄ちゃんリクさん〜。我が家一の肉体派です。ついでに不幸体質です。つつくと面白いんですよ〜!」
「ちょっと!もう少しいい紹介の仕方あるでしょカナタ!!」
「六番兄ちゃんナナトさん。まーウチで一番無害な人ですよね。でもやっぱりつつくと面白いです」
「な……ナナトです!よ…よろしくお願いします!!」
「三男以下は僕含め五つ子なんですよ〜。僕らとアオイさんはすぐそこの公立高に通ってます。
さ!こちらは全員紹介しましたので、そちらの紹介もお願いします〜☆」
 自分の仕事はやりきった、とばかりにカナタは満面笑顔で席に座りなおす。
「……えっと」
「どうする?誰かまとめて紹介する?」
「自分の事は自分で言えばいいだろう。じゃあ逆周りでヒロから」
「え、ええっ!?ぼ、僕から!?……えーと……」
 クラハに振られたヒロが、顔を真っ赤にして立ち上がる。
「……ヒロです。高校三年です……皆とは違う学校なんだけど、仲良くしてくれると嬉しいな。よろしくね?」
「カイルです。この春大学の教育学部にはいりました。どうぞよろしくお願いします」
「ケイです。体育大の一年、好きなものはお饅頭。美味しいお饅頭を見つけたら、僕に教えてね?」
「……ユーリグです。専門で製菓を学んでいます。……因みに、僕とケイさん、カイルさんは三つ子です」
「次は私だな。……クラハという。隣のルレンの双子の弟だ。よろしく」
「……じ、次男、の………ルレン、です…………よ……よろしく…………」
「改めて、ユウだ。この家の長男で、美大に通っている。専攻は油絵。よろしく」
 一人一言ずつの自己紹介が終ると、逆サイドからおおーという小さな歓声と拍手が起こる。
「やっぱりちゃんと年齢順に並んでたんですね」
「ルレンさんとクラハさん……双子ってびっくりなんですけど……」

 特に次男、三男ペアが物議をかもしているらしい。
 視線が自分達に集中しているのに気付くと、ルレンは顔を目一杯困らせてうつ向いてしまう。
 同じ様に注目を浴びていても、クラハはカケラも気にした様子がない。
 ただ、黙々と目の前の料理を取り分けていくだけだった。

「……じゃあまずごはん、食べてしまいましょう。言ってくれれば取り分けますよ」
 ユーリグが椅子から立ち上がった音を合図に、皆の手が急に慌ただしく動き出す。合計28本の腕が食卓を行き交う様は実に壮観であった。

「君たちは昔からあそこに住んでるの?」
「はい。引越ししたことないです」
「ヒロさんて高校近いんですか?」
「うん、寮のある私立知ってる?あそこ」
「カイルさん!!サイズいくつですか!?スリーサイズとか服とか指とか!」
「その手の質問は却下します!」
「こっちとそっちのピザは味が違うのか?」
「具材が違いますから。とりますよ?」
 その内、会話が盛り上がって来ると一人、また一人と席を立ち始め、終いには立食パーティー状態になっていた。

「あっ、ユウさんユウさん!!」
「?なんだろうか」
「昨日送りました『今日のユイさん』はお気に召しませんでしたかー?」
 くりっ、と顔を覗きこむような仕草で尋ねるカナタに、ユウは逆に首を捻った。
「………昨日と言うと?」
「正確には昨晩です。……この写真送ったんですけど、届いてませんか〜?」
 そう言ってカナタが差し出す携帯電話の液晶には、何やらユイが怖い顔で足をふりあげている姿が写っている。
「……あ。………すまない、誰から来たメールか分からない上添付ファイルがついていたから……削除してしまった」
 メールに心当たりがあったユウは、正直に言うと、小さく頭を下げた。
「あれー、アドレス間違ってました?」
「いや、その……申し訳ない、あの後……ユイに、君達のデータを消されてしまって……」
「……あ。そういうコトですか。ユイさんならやりそうですね〜」
 ユウが皆までいう前に、カナタは事情を察したようだった。
「……流石に、教えて貰って二時間もしない内に消してしまったとは言えなくて」
「うーん、それは確かに言いにくいかもですね〜。でもユウさんのせいじゃありませんから、気にしないで下さい。……はい、送信完了です」
「送信?……あ」
「もう一回僕らのアドレスとナンバー、メールしましたー☆」
「え、あ、ありがとう…!でも勝手に教えてしまって大丈夫なのか……?」
「だって一度教えてますし、問題ありませんよ!」
「……そうか、ありがとう」
「また今度、ユイさんのおもろかしい写真、送りますね〜☆」
「……これで六人分、あとは長男のあの子か」
「あ、ちょっと待ってて下さい?」
 言うと、カナタは向こうで話し込んでいたアオイによっていく。
 そして、二言三言かわすと、すぐに戻ってきた。
「アオイさんの、教えていいと許可貰ってきました〜。すぐメールしますね〜!」
「……よかったのか?」
「いいんですよ、その代わり、弟さん方のアドレスとか、僕に教えて貰えるよう口添えしてくれたら嬉しいです〜!」
「わかった。もっとも、僕がなにかいわなくとも、皆聞けば教えてくれると思う」
「あは〜、だといいんですけど〜」

ユウ 本日の収穫

ユイに消された五つ子の携帯データ復旧&隣家長男携帯データ。

現時点で14人分のデータが揃っているのはユウの携帯だけである。


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