| † 七、という数字は、とりあえずここらの世間一般において悪い印象は特別ない。
勿論、ここらにおいて、の話ではある。「7」が縁起の悪い数字だったり、「4」が神聖な数字とされている場合だってある。
数字はあくまで「数」を表すだけのモノである。
それに意味を持たせているのは人間の意識だ。
つまり、人によって数字の意味合いは異なってくる。
……まあ、ようするに。
僕は「7」という数が好きなわけだ。
僕には可愛い従兄弟が七人いる。
僕自身には兄弟姉妹はいなかったし、従兄弟達とは年も家も近かったから、小さな頃からずっと一緒だった。
長男・ユウ。僕と誕生日は数日しか違わない。天然でマイペース、時々ものすごい爆弾発言をしたりする。身長が僕より高いのはアレだが、知的な風貌の美人である。
次男・ルレン。兄弟中最も小柄で童顔。丸まって眠る姿は、本当に仔猫のようで非常に愛らしい。よく体調を崩す僕の面倒を、一番よく見てくれるのもこの子だ。
三男・クラハ。美貌の大食漢。ちょっとやそっとじゃ動じない、ある意味非常に男前。…本当にあれ、何処に食い物が入っていくのかが未だにわからない……
四男・ユーリグ。ぱっと見はまるで美少女だが、中身は主夫。ルレンの次に小柄だが、多分兄弟一の武闘派。怒るとこれがまた可愛い。
五男・ケイ。兄弟のムードメイカー。明るく朗らかで健康的。その反面、冷静な観察眼も併せ持つ賢い子。
六男・カイル。穏やかで心優しいはにかみ屋さん。でも、好きなものには一直線。面倒見も良い。
末弟・ヒロ。六人の優しい兄に囲まれて、健やかに成長中。
七人揃って美人、基本的に気立てがよく、賢い上に腕っ節まである。
……一人でも女の子がいたら、何がなんでも嫁にしたんだが。
そんな最強の従兄弟達は、少し前までわけあって上三人が実家を離れていたのだが、この春、晴れて新居で七人揃って暮らせることとなった。
僕はその上三人と同居していた身なので、少し……いや、大分寂しいのではあるが、従兄弟達の幸せにはかえられない。
まぁもっとも、僕が一人で暮らす部屋からここまで、大した距離はないのだが。
ともあれ今日は、兄弟七人での生活を取り戻した従兄弟達の様子を見に来たわけだったが……
奇妙な事に、従兄弟の家には合計14人もの人間がいた。
家が、その人数でもあっさり収まってしまう広さなあたり、叔父上の親馬鹿っぷりが窺える。
気持ちはよくわかりますよ、伯父上。
……聞けば、半分は隣家の住人らしい。
ちらっと聞いてはいたが……またクセの強そうなのがキたもんだ。
なんでも、七人の内五人が「五つ子」らしい。五つ子なんて、生で見るのは初めてだ。
一番ちっこいのは、口と頭が回るタイプのようだ。
更に驚いた事に、こいつは早々にカイルを「射止めて」しまったらしい。
……いやいや、僕だって耳を疑ったさ。一体どんな手を使ったのだろう。是非ご教授願いたいものだ。
二番目に小さいのは、良くも悪くも「マトモそう」。こういうアクの強い集団内において、一番苦労するタイプだ。まあ、頑張ってもらおう。
一番目を引いたのは、一人青い瞳をした、心持ちがっしりしたタイプ。
何がって、その……玉砕っぷり?
どうにもユーリグに気があるようなのだが……先刻からすごい勢いでぼかすか殴られている。
僕もよくおいたをしては殴られているが、その比ではない。
あ〜…僕の時には大分手加減してくれてたんだなぁ、ユーリグ……あっ、涙がでてきた。
……はさておき。青い瞳の彼は相当打たれ強いようだ。……ユーリグが折れるのが先か、彼の骨が折れるのが先か……楽しみ?ではある。若いっていいなあ。
残りの二人は、人当たりの良さそうなのと琥珀のどんぐりまなこだ。
なかなかよさげなコンビに見える。五つ子の中でも兄貴分なのか?
琥珀の方は打てば響くタイプだろう。つついたらきっと面白い。もう一人はわりと肝が座ってそうだから、からかうなら琥珀の方だな。
……この二人、ケイとルレンを交互にみてるようだが、あれはどういう意味なんだ?……品定め?二股はお兄さん許しませんよ!
五つ子の他には、兄貴が二人ほどいるようだ。
一人は、我が従兄弟達の横に置いておいても見劣りしない位の、綺麗な顔をしたのが一人。
最後の一人は、これまた反骨精神の強そうな……あれが問題の「ユイ」か。
ユウがモデルにしたい、というから、一体どんな美少年かと思ったら……
いやいやアレか?
普段から綺麗なのや可愛いのは見慣れてしまっているから、別方向というか新境地開拓というか……
そういう意味として考えれば、彼があの中では一番、今までになかったタイプと言えるだろう。うん。
「ねえ、ユウ?あそこで……ああ、弟けっとばしたよ、容赦ないねェ〜……ってのが、件の『ユイ』君?」
ソファでくつろいでいたユウの隣に座り込み、弟共を蹴り散らかすユイを示してやる。
「ああ、あそこで無体をはたらいているのがユイだ」
たいして珍しい光景でもないのだろう、ユウは眉ひとつ動かすことなく、ユーリグブレンドのコーヒーを一口すする。
「おにーさん心配だなァ、ユウちゃんも蹴られたりしない?」
「ユイのあれは、どうも一種の教育法のようだ。……アオイに手を……足を?あげ ている所は、今のところ見てないし、大丈夫だろう」
「…引越しから、二週間強?……随分信用しているね?」
「信用というか…素直ではないけれど、嘘がつけるタイプではないよ」
さらり、と言ってのけるユウ。……ふむ。
「……ははぁ。さては惚れちゃった?」
「?何にだ?」
試しに直球を放ってやるが、ユウはきょとんと僕を見返すばかりだった。……無自覚?
「ちょっと〜?ロウ、ユウの事占領しすぎじゃないの?」
と、ユウと饅頭に関しては人一倍目ざといケイが、背もたれの後ろから僕の髪を引っ張ってきた。
「いやぁ、あんまりユウちゃんがかわいいからね?お兄さんとしてはちょっかいかけたくなっちゃうわけさ」
「ユウの事、いじめたら僕がただじゃあおかないんだからね?」
「わかってますわかってます。いじめたりなんかしないよ」
「ならいいんだけど。……あ、ロウ、詰めて。僕も座りたい」
「はいはい、どうぞ?」
ユウとの間を空けてやると、回りこんできたケイは、そこにすとん、と収まる。
「もーっ、ロウはずっとユウ達独り占めしてたんだから、たまには頂戴ー」
「じゃあ、ケイは三つ子とヒロを独り占めしてたんだから、たまには僕に頂戴?」
「えっ!?……えーとえーと……」
ぷく、とふくれたケイの真似をして言い返してやると、予想していなかったのか、ケイはわたわたと慌てだす。
「いや、そもそもその論法がおかしいから」
その隣では、ユウが至極もっともなツッコミを入れている。
ふと見れば、五つ子の……レンと言ったか。
こちらを、複雑な表情でちらちらうかがっている。
……なるほど、ケイ狙いなのか。
更に、向こうではユイが、こちらを窺うどころか、モロにガンを飛ばしてきている。
今気が付いた、というフリをして、笑って手を振ってやると、ユイはムッとしてそっぽを向いてしまった。
まあ、今日の所は牽制。
この兄弟に手を出すつもりなら、一人面倒くさいのを相手にしなきゃいけない、というのを、お隣さん方には覚えておいて戴こう。
「……あ、そういやお土産、買ってきたんだぞ?先刻ユーリグが持っていた箱」
「そうなのか?」
「うん、黒白堂のぱんだ気味饅頭」
「うそっ、本当に!?うわぁい、ロウ好きー!」
右手をユウの腕に絡めたまま、ケイが僕の腕にすりよる。
よしよしと黒髪を撫でてやると、嬉しそうにふにゃっと笑った。
……あ、また視線がちくちくしだした。
そろりと周囲を窺うと、更に表情を複雑化させたレンと、笑顔の頬にくっきり青筋を浮かべたユーリグがこちらを見ていた。
レンはともかく、ユーリグからしたら僕もお隣さんも、大差はないのだろう。
これは、また殴られない内に退散した方が良さそう……かな?
++了++
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