† 

 

「では、閉会します。解散!!」
『早っ!!』

 

 カナタの突然の宣言に、残りの五つ子が一斉にツッコんだ。

「だって、ゲームも終っちゃいましたし料理もなくなっちゃいましたし。そしたらもう後は自由時間でいいじゃないですか」
 そのツッコミに、カナタはしれっと答える。
「というわけで……カイルさーん!僕と愛情を深める為にこれからデートにうぐげっ。」
 いうが早いか、カイルの手を取りに行ったカナタの襟首を、寸前でユーリグが捕らえる。
「カナタ君?申し訳ありませんが、カイルさんにはこの後お買い物に付き合っていただく予定なんです。
……大人しくおうちに帰って下さいな?」
「ギャース!ゆ、ユーリグさん指が!指が食い込んで……ッ!く、首の骨が折れます〜っ!!」
「あはは、そんな大袈裟な。全然力いれてませんよ?」
 見た目にはそえられているだけだが、きっと実際はものすごい力で掴まれているのだろう。
 残りの五つ子は、その光景に戦慄する。
 ……約一名、「いいなぁ〜……」等とのんびり眺めている者もいるが。

「じゃあ……どうしましょう、僕らもお暇しましょうか」
「そうだな、あまり邪魔になってもいけないし……」
 アオイがそう言って立ち上がると、弟達もそれに倣う。
「僕はもうちょい片付けてくよ。皆帰ってて」
「あ、それなら僕も」
「……そんな事言って、二人とも居座りたいだけなんじゃないですか〜?」
 そのままダイニングに向かおうとするハズミとレンに、ユーリグから解放されたカナタがここぞとばかりにチャチャをいれる。
「じゃあカナタ、代わりにあの皿全部綺麗に洗って返しといてくれる?それなら僕も帰るけど」
「……うそですすいません……」
 レンがさっくり切り返すと、先程のダメージが抜けきらないのか、カナタはあっさり白旗をあげた。
「いいんですか?」
「元々、マクドールさんの歓迎会だったんですから。あまり主賓の手を煩わせるわけにもいきませんし」
 尋ねるユーリグに、レンがにこりと笑ってみせる。
「じゃあ、オレ達はこれで。……大したことはできませんが、何か困ったらいつでも声をかけて下さい」
 アオイが、長男らしく挨拶をして頭を下げる。
「こちらこそ。……良いお隣さんに恵まれたようで嬉しい」
 同じ長男のユウが、眼鏡の奥で柔らかく微笑んだ。
「じゃあ、失礼します」
「本当に、何時でも声掛けて下さいね!」
「カイルさん!今度デートにもぐっ。」
「……お、お邪魔しました!」
「…………」
 ハズミとレンを除くデュナン家一同が、順番に玄関へと向かう。
「気をつけて。……まあ、お隣なんだが」
「ああ、またな?」
「ごちそうさまでした〜」
「今日はありがとうございました」
「これからもよろしく!」
 笑顔でそれを見送るマクドール家の面々。

 ……そんな中、最後に靴を履いたユイに、ルレンが遠慮がちに声をかけた。
「あ、あの……ユイ……?」
「?なんだ?」
「さ、さっき……言ってたの、見る……?」
「さっき?……あ、免許。」
「うん」
 こくん、と、ルレンの首が縦に揺れる。
「あー……免許はいいや。別に年疑ってる訳じゃねぇし。それよかバイクの方が見てぇな」
「う、うん!見る?こっち」
 ユイの言葉に、ルレンは小さな靴を足にひっかけた。

 

「……こんな所でしょうか」
「ですねー」
 ようやく片付いたキッチンを眺め、ハズミとレン、ユーリグと、手伝いに来てくれたカイルは互いに頷きあう。
「ほんとーにお疲れ様でしたっ!……すみません、ウチじゃ狭くてこういう事できなくて」
「いえ、こちらこそ、お気遣い下さってありがとうございました」
 ぺこん、と頭を下げたハズミに、ユーリグがにこりと微笑んだ。
「あ、ハズミ。丁度いいから僕らも買い物いきましょうか。ユーリグさん、例の卸売の店、ご案内しますよ」
「いいんですか?ありがとうございます……!カイルさん、少し行った所に卸のお店があるそうなんです。一緒に行きませんか?」
「はい。是非」
 にこにこと笑いあうユーリグとカイルの横で、レンとハズミは顔を突き合わせる。
「……いい?僕らが先に一通り案内してしまえば、カナタやリクが『案内しますー』とか、変なちょっかい出せなくなるでしょう」
「え?うんそーだね」
「ちょっかいかける数が減れば、叱られる回数も殴られる回数も減るでしょ」
「……流石レン……そんな事まで考えたのか」
「ハズミも少しは考えて下さい。明日は我が身ですよ?」
「……わかめ?」

††

「ええと、じゃあウチの前を通らないようにこっちから……あれ」
 外に出たレンは、聞こえた人の声に耳をすます。
「ん、どしたのレン」
「……幻聴……?」
「いや、なんか声はするけど?」
「……ユイが談笑しているみたいに聞こえた」
「それは幻聴だろ……あれ?」
 声は近くからするようなのだが、どこからするのかはわからない。
「……?ハズミ君レン君、どうかしましたか?」
 支度を終えて、家から出てきたユーリグとカイルが首を傾げる。
「あの……なんか声が」
「あ、うちのガレージじゃないですか?」
『ガレージ?』

 確かに、よくよく注意して聴いてみると、声は下りたシャッターの向こうからするようだった。

「こちらから入れますよ」
 カイルの指差すガレージ脇には、開け放たれたままの小さなドアがあった。


「でね、『毛布被ったらこたつみたいだよね』って」
「確かに熱くなるからな。……でも被りながら走るのは無理あるだろ」
「流石に試したことはないけどね。でも排熱、勿体無いよねえ」
「真夏に目玉焼きくらいは焼けるんじゃねぇ?」
「あは、ガソリン味しそう」
「してたら問題だろ。ガソリン漏れじゃねぇか」

 広いガレージの隅に、ちょこんと置かれた黒いバイクの横で、ルレンとユイがなにやら楽しそうに話をしていた。
「ユイ!お前、帰ったんじゃ……!」
「兄さん!どうしたんですかこんな所で……!」
 その光景に、ハズミとユーリグが同時に声を上げた。
「あ?なんだ台所どもか。別にいいだろ、俺がどこに居ようが」
「あっ、あのね、ユイもバイク乗るんだって。だから、僕の見てもらってたの」
 ユイがむすっと、ルレンがにこにこと振り返る。
「そうだったんですか。よかったですね、お話できる人が増えて」
「うん!」
 唯一カイルだけが、ルレンと一緒ににこにこする。
「皆はどうしたの?お買い物?」
「……え?……ええ、安いお店があるそうなので、二人に案内していただくんです」
「………そっか。行ってらっしゃい。気を付けてね?」
 一瞬、ちらっとハズミやレンに視線を送ったルレンは、やがてにっこりと微笑んだ。

†††

「……まさかルレンさんがバイク乗りだったとは」
「意外でしたね……」
「危ないからやめてほしいんですけどね……」
「仕方ないですよ、うち車ありませんし」
 道すがら、カイルを除く三人は、何故か肩を落として溜め息をついていた。
「あのユイが談笑ってありえないし……!」
「しかも一番話が合わなそうなルレンさんと…ですし」
「つかあれじゃないの、ユイってユウさんとつきあってるんじゃないの?あれって浮気じゃないの二股じゃないの!?」
 カイルがユーリグをなだめてる後ろで、ハズミが小声でぶちぶち文句をたれる。
「だいたいユイはいつもそーじゃん、自分一人で……」
「確かに、要領はいいですからねえ、カナタの次に」
「あー腹立つ!今日の晩飯はユイのキライなもの決定!!」
(……なんかものすごい腹の立て方だなあ……?)
 腹が立つのはわかるが、そこまで怒ることか……?と、レンは内心首を傾げる。
「ロウさんの所にいた時からですから、ルレンさんにはもう生活必需品になってしまってるんですよ」
「……そうですよね、仕方ないのはわかっているんですけど……あれ?」
 その時、カイルになだめられてたユーリグが急に声を上げた。
「カイルさん、そういえばロウさんはどうしたんですか?途中からいなくなりましたよね?泊まってくって言ってたのに」
「え?ロウさんなら、ルレンさんが自分の部屋で寝かせる、と上に……まだ寝てるんじゃないですか」
『えっ!?』
「あ、そうか、それでルレンさん、あんな所で話し込んでいたんですね、起こさないように」
『あのしっぽ頭!!』
 ユーリグとハズミの叫び(?)が、綺麗にハモる。

「……急いで買い物済ませて帰りましょう」
「近道、教えます」

「……ハズミとユーリグさんに、なんか変なスイッチ入った……」
「え、え、どうしたんですか二人とも?」
 傍観をきめこむレンと、事態が飲み込めずおろおろするカイルの視線の先で、ハズミとユーリグはずんずん歩調を早めていくのだった。

 

本日の晩飯

四男合わせ技
「食わず嫌い固め」発動。

デュナン家次男→効果はイマイチ。特別食べられないものないので。
マクドール家従兄弟→効果覿面。偏食野郎なので。(笑)

++了++


BACK