| † ・正しいオリジナル着歌のとり方。
一、歌ってくれる人を探しましょう。
「カイルさ〜ん!着音にしたいので歌って下さ〜い!!」
「う、歌!?無理!!」
・瞬殺されないように慎重にお願いしましょう。
「えぇぇ〜、もう、なんでもいいんです!童謡だってCMソングだって……鼻歌程度でいいんです!」
「無理!!」
・無理強いをしてはいけません。弁護士を呼ばれてしまいます。
「じゃあせめて『メールです』と『電話です』の一言を!せめて!せめて〜!!」
「……う、うう……」
・時には押しも大事です。
二、なるべく歌い手が得意な、或いは好きな歌をチョイスしましょう。
「ルレンさ〜ん!こないだおすすめした歌、どうでした〜?」
ガレージでバイクをいじっていたルレンをめざとく見つけ、カナタは声をかける。
「あ、うん良かった!あれから暫く、繰り返して聴いてたよ」
最近ではカナタとお喋りするのにも慣れたらしく、ルレンは話しかけても普通に微笑んでくれる。
「気に入ってもらえたようですね〜☆」
「うん♪」
「あ、それじゃあもう歌えちゃったりしますかー?」
「うーん、歌うだけなら歌えると思う……」
細かい音はまだはいってないかもー、と首を傾げるルレン。
「じゃあ、是非是非歌ってくださーい☆」
「あはは、ここで?」
「……ここは反響してしまうので、ちょっと。」
「……えっ、そんな真剣に?」
大真面目なカナタに、ルレンは思わず瞳を瞬かせた。
・何気なく歌う方向にもっていければベストです。
三、録音環境を作りましょう。
「あ、録るんだ……?」
カナタがカバンから取り出す録音機器を見て、ルレンはぽそっと呟いた。
「着歌にしたいんです〜。せっかくですから綺麗に録りたいんです〜」
「……だったら、下使う?」
「した?ですか?」
「おおおおお……!」
「父が気を遣ってくれてね、防音室を作ってくれたんだ」
いつかハズミが落ちかけた、地下への階段。
その先にあったのは、なんと防音室であった。
「物置なのも本当なんだよ、むこう」
言って、ルレンは視線で奥を示す。
「わあ、じゃあ……この中では泣こうが叫ぼうが外には聞こえないわけですね……?」
「うん、だからここのドアは外開きで鍵はかからないんだ。あぶないからね」
「………成程です。先に聞いておいてよかったです……」
「携帯は入りづらいけど、ちゃんと内線があるから大丈夫だよ」
明らかに別の事を考えていたカナタを、密閉空間に怯えているのと勘違いしたルレンは、
防音室の事を優しく説明していく。
室内に入ると、そこにはソファとピアノ、小さなテーブルと、楽器がいくつか置かれていた。
「ここなら外の音は入らないし、簡単な伴奏も入れられるよ」
「わ〜☆どんどん本格的になります〜!」
「じゃ、少し時間頂戴ね」
「は〜い、ですー☆」
四、録音中は静かにしていましょう。
「……どうかな、こんなのでいい?」
「かんぺきです〜!そのままCDにしちゃいたいくらいです!」
歌いおえたルレンに、カナタはソファから立ち上がり、惜しみない拍手をおくる。
「大袈裟だなあ」
「……これ本気で商品化できませんかね……」
「それは……難しいと思うなあ」
「ですよね〜……」
・着歌以外に使う場合は、必ず許可を取りましょう。
五、録り終えたらお礼を言いましょう。
「お陰さまでステキな着歌が出来ました〜!ありがとうございますですー!」
一度機材を置きに帰り、戻ってきたカナタが深々と頭を下げる。
「いいえ、こちらこそ歌わせてくれてありがとう」
「(ルレンさん、こういう所はすごく大人です…!)あ、それでですね、これ、今日のお礼です〜!」
「え、いいよそん……な……」
ルレンは慌てて手を振るが、カナタが差し出した箱がなんだか分かると、その手が止まってしまう。
「……と……『トリップス』……の、もしかして」
「もちろん、『トリップス』といえばチョコレートケーキ☆ですよー!」
「……カイルにお茶、お願いするから……カナタも一緒に食べよう?」
「あはははは〜、遠慮しないで下さい〜!でも、カイルさんやルレンさんと一緒にお茶が出来るなら喜んで〜☆」
「……というわけで、きちんと出すものは出してます」
「『トリップス』のケーキって、確か結構な値段したよね」
「でも、本職の方にリクエストで生歌伴奏付きなら安いと思いますよ?」
「ねえ、カイルさんみたくNGファイルはないのー?」
「それが恐ろしい事に、これ一発録りなんですよー。本番前に歌と伴奏をそれぞれ練習はしてたんですけどね〜」
「ねぇねぇカナタ!それ、僕にも頂戴!」
「あー、いいないいな!僕も欲しい〜」
「あ、僕も是非」
「さ〜て、どうしましょうかね〜?ルレンさんにも許可もらわなくちゃですし〜?」
「……おまえら、それ態とココでやってやがるな……?」
居間でカナタ達がわきゃわきゃ盛り上がるのを、夕食の支度をしているハズミはえんえん聞かされ続けるのであった。
「カイルが歌ってくれたら、僕リコーダーやったのになぁ」
「無理ですよ、家族ならともかく、人前で歌うなんて……!」
(普通は家族の前の方が恥ずかしいんだけどなぁ)
真っ赤になって首を振るカイルの頭を、ルレンはよしよしと撫でる。
「カナタが、今度皆でカラオケ行きましょうねって言ってたよ?」
「だから無理です〜〜……」
++了++
|