**リレー企画05**

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 続く競技は二人三脚である。

「どする?僕代わりに行こっか?」
「ん〜……」
 この競技は、リクとナナトがペアでエントリーしているのだが、リクの右足は現在、テーピングでガチガチである。
 一人なら引きずりながら走れない事もないが、二人三脚ではそうもいかない。
「……ごめん、頼んじゃっていいかなあ……」
「しょうがないじゃん、いいよいいよ!」
 申し訳なさそうに言うリクの肩を、ハズミがにっと笑いながらぽすぽす叩く。
 そんな二人を、半数は兄弟愛(?)にほっこりしながら、もう半数は「本当ならもっとエントリーすべきだろお前は!」と目線で訴えながら――チームメイト達は見守っていた。

 が。
「その方がいいよ。二人三脚でもしまたコケたら、足悪化しちゃうもんね」

……二人三脚で……コケたら……?

 ナナトがぽろっと吐いた言葉に、周囲の空気が凍った。

 二人三脚はコケる。コケれば怪我をする可能性がある。
 ハズミは、午後に100Mの準決勝を控えている。予選の調子なら、入賞も狙えるだろう。
 対してリクは、400Mで予選落ちしたため、この二人三脚で個人参加競技は終わりである。
 部活対抗リレーにもエントリーしているようだが、直接全体の勝敗に関わる所ではない。つーかぶっちゃけ知ったこっちゃない。

 二人三脚は、どちらかといえばスピードより呼吸が重要である。
 どうせ全速力では走れないのだから、足の早い遅いは、それほど重要ではない。
 呼吸に関しては、五つ子の中三人である。どの組み合わせでも問題はないだろう。
 もしかしたら、ナナトと組ませるなら若干気性の荒いハズミより、おっとりしたリクの方がいいかもしれない。


 結論。「リクの足よりハズミの足が大事。(酷)」


「……いや!ほら、右足を固定する方にしてさ!」
「大丈夫大丈夫、さっきだって借り物競争一位だったじゃん!」
『………へ?』
 足同士を結ぶ紐は、いつの間にかナナトの手から取り上げられている。
 それを手に、チームメイト達はリクににじりよっていく。
「いやだから、紐結んだら痛いんじゃ……」
「ハズミは向こう行ってジャージでも着て来なさい!」
「なにそれ!」
「……リクは……我慢強さには定評あるから…大丈夫だ  よ  ね … ?」

「えっ、あれっ、ち、ちょっと皆なんか顔がこわ……に゛ゃ゛〜〜〜〜〜!!」
「いたいいたいいた――い!ひ、ひっぱらないでもげる!」

「わーこらお前ら!ウチの弟どもに何をする!」
「女子!ハズミ確保!!」
『らぢゃーvv』
「あああっ!ひ、卑怯な!」
 弟達を助けに入ろうとしたハズミは、クラスメイトの少女達に腕を取られ、あっさり動けなくなる。
 男にはわりと容赦のないハズミだが、逆に女の子には基本甘い。
 余程の緊急事態でなければ、女子をふりほどくような事はしない。

 ……今回は残念ながら「緊急事態」には該当しなかったようだ。



「……さっきあれだけ大口叩いたのに……なんかごめん」
「いや、むしろこっちがごめん……そんなイモムシ状態にしちゃって」

 結局。
 二人三脚には、当初のエントリー通りリクとナナトが参加することにさせら……いや、することになった。

 ハズミはといえば、暴れないようチームメイト達のジャージでぐるぐる巻きにされ、すみっこの椅子にちょこんと乗せられている。
 ……さながら拘束衣を着せられた虜囚である。
 女子にばしゃばしゃ写真を撮られながら、ハズミは長く息をついた。

「リク、無理せずにゆっくりな。酷くすると後にひびくから。……ナナト、ペース合わせてやってね」
『うん、わかった』
 ハズミの言葉に、リクとナナトは声を揃えて頷く。
 それを見届けたハズミは、やれることはやったとばかりに、体を背もたれに押し付けた。


「リク、ホントに無理しないでね?痛かったら、途中歩いていいからね?」
「うん、ありがとー……」
「練習じゃ転んだことなかったのにねー」
「……ああ……それはその……カナタが」
「え?」


「……そんなことがあったんだ〜…あ。でもさ!さっきの借り物競争、一位とったじゃん!足怪我してた
のにって、見直してもらえないかな!」
「…………………更に二人三脚で一位取ったら、見直してもらえると思う?」
「え?」
「………ナナト、全速力でイクよ☆」
「……えええぇえ?」



「…予想通り、二人三脚は持ってかれましたね。カナタ、リク全速力で走ってますよ?」
「あれぇ?借り物競争の時は確かに足引きずってたんですけど……実は大したことなかったってオチで
すか?」
「まあ、予想の範囲内です、構いませんよ。さて……」
「……所でレンさん……」
「はい?」
「僕は一体いつまで捕まってるんでしょう……」
 カナタがぎぎぎと首を向けたのは、自身の背後。
 そこには、後ろ手に縛られた両腕がだらんと垂れ下がっていた。
「だって、放したらカイルさんとこすっとんでいくでしょう」
「すっとんでいきますね」
「……閉会まで拘束決定」
「なんで――!?」




「ゼェ……ゼェ……ぶひゃっ」
「ロウ。思い出し笑いしないの」
 スタンドでは、何故か喘息の発作を起こしかけているロウウが、ルレンの膝枕を堪能していた。
「だ……だって……ゼェ……面白過ぎるだろうあいつら!
紅と白でおんなじよーに拘束されてるし、ゴールはヘッドスライディングだし!あははははげほげほっ。」
「だからって、発作起こすほど笑わなくてもいいでしょう、皆一生懸命なのに……はい、あった」
 ごそごそとロウウの鞄を漁っていたルレンが、やがて吸入薬を引っ張り出す。
「おー、さんきゅさんきゅ。………ぷは……っ……はぁ………ルレン?もう少し落ち着くまで、膝借りてていいか?」
「はいはい、いつまででもどうぞ」


「……クラハさんあの……」
「?なんだ?」
「……僕達目立ってませんか?なんだか周りの人が皆こっち見てる気がして……」
「そうか?気のせいだろう」
「はぁ……そ……そうだといいんですけど……」



 こんな所で堂々と膝枕なぞしていれば、そりゃあ目立つ。
 更に、クラハが顔をさらしていれば、その美貌に誰もが目を向ける。
 そこに、先程校門前でまるでアクション映画のような立ち回りをした(のはハズミとレンだけなのだが)カイルが来れば、見るなという方が無理だ。

「……早くケイさん来ないかなあ……」
 クラハの肩にすがりついたカイルは、心底困った顔で呟いた。

 

「この馬鹿リク、人が心配してやってんのにさ」
「ごめん、ハズミ。でも一位取れたんだからいいじゃない。きっとユーリグさんにもご兄弟経由で見直してもらえるよね!?」
「それで足悪化させてちゃどうしようもないっしょ」

 二人三脚を終えたリクとナナトは白組陣営に戻ってきていた。全力で走った上にゴール時にヘッドスライディングを強行した結果、痛めていた足を更に悪化させてナナトに肩を貸されて戻ってきた愚弟にハズミはおかんむりである。リクは謝りながらチームメイトの施したハズミの拘束を解いていった。ハズミとリクはいずれも午前中の出番は既に終わっている身である、談笑している2人の傍らでナナトは1人緊張感に包まれていた。
 午前のプログラム、最後の競技は1000メートルだ。デュナン兄弟ではナナトが二人三脚に続いてエントリーしているため、ナナトにはまだ出番が残っているのだ。

(リクは凄いよ、足を痛めてるのに借り物に続いて二人三脚も一着になったし。ハズミも予選は一着で通ってるし。…僕も2人を見習って白組に貢献しないと!)

「それじゃあ僕はまだ出番あるから行ってくるよ」
「おう、ナナト頑張ってきなね」
「戻ってきたらマクドールさん達と一緒にお昼だからね」
「うん、頑張ってくるから先行っちゃわないでね」

 ナナトは欲望に走った兄とは違った真摯な気持ちで気合を入れて、出場選手入場口へと向かった。



「ナナトも一着でしたね。予想通りではあるんですけど、敵対チームとしてはあまり面白くありませんね」
「レンさん、レンさーん。つかぬ事をお聞きしますが、本当に僕閉会までこのままなんですかー?」
「勿論です。何か不都合でも?」

 午前最後の競技も終わり昼休憩のアナウンスがされる中、紅組陣営では借り物競走の一件から変わらずカナタは後ろ手に縛られていた。そしてそのカナタに対するレンの返答は実にそっけないものだった。

「酷いです!?実はさっき応援席で聞いたんですけど、ユーリグさんが僕達の分もお弁当用意してくれたらしいんですよ!せめてカイルさんとお弁当の食べさせ合いっこくらいさせてくれるのが人の道ってもんじゃないんです!?」
「ユーリグさんの件は知ってますよ、御本人から聞いてますから。でもカナタの希望を認めるかどうかは別問題です。さすがにユーリグさんにうちの兄弟の分まで全て用意してもらう訳にはいかないですからね。ユイの分のついでもあったんで、僕の方でもちゃんと用意してきてます……という訳で、ここに閉会までいても食いっぱぐれる心配はありませんよ?」

 あくまでも表向きはにこやかに容赦のない事を告げる兄の言葉に、知らずカナタの背を冷や汗が伝う。この場を切り抜けあわよくばカイルといちゃラブできる打開策はないか…カナタの脳細胞がフル回転した結果、カマを掛けてみる事にした。

「……レンさんのお手製、本当に僕が食べて良いんですか?」
「……どういう意味ですか?」
「確か…そろそろケイさんもいらっしゃる頃ですよね?」
「……分かってるなら言わせないでください」

 カナタの言葉に溜息を吐いて、レンはカナタの両手を後ろ手に縛っている縄を解いた。計画通り!と密かに喜んだカナタだったが、無罪放免とはいかず、あくまでも固定されていた椅子から解かれただけで両手は繋がれたままだった。カナタを縛っている縄の先をしっかりと握り締め、レンはカナタに微笑みかけた。

「いいですか、食べさせる・食べさせてもらうなんて事は考えないでください。会話まででスキンシップは禁止です。守れますか?」
「お、お昼休み限定の条件って事なら妥協しますよ、こんなところに繋がれてカイルさんを遠くから眺めるだけよりはマシですから!」
「返事だけは良いんですけどね…。それじゃあ行きましょうか」
「レンさん、ありがとうですよ!って、何故にこのままですか、僕そんな趣味ありませんよ!?」
「奇遇ですね、僕もそんな趣味はありませんから」

 周囲にはクラスメイトもいたが、遠巻きに見つめるだけで誰一人として声を掛けようとする者はいなかった。そんな中、異様な二人組に声を掛ける勇者がついに現れた。

「あ、レン君だ。じゃあ入るとこ間違ったのかな…僕今来たとこでさ、カイル達どこにいるか知らない?」
「ケイさん!こんにちは、丁度午前のプログラムが終わったところなので今から昼休憩なんですよ。僕達も今からマクドールさん達のところへ合流しようと思ってましたから、一緒に行きましょう」
「うん、ありがとう。……ところでカナタ君、何してんの?」
「ケイさん、良いところに〜。聞いてください、レンさんが……あれ?」

 ケイの登場によるレンの豹変ぶりを見て、カナタがドン引きしたのは言うまでもない。ケイに話を振られたのは絶好の好機とばかりに、カナタはレンの暴挙を身振り手振りを交えて訴えようとして…先程まで縛られていた自分の手が自由になっている事に気付いた。

「僕が、何ですか?」
「い、いえ、何でもありませんよ!……流石です、ケイさんが現れたと同時に縄が何処かに消えましたよ、レンさん恐ろしい子…!何はともあれこれで心置きなくカイルさんといちゃラブできます〜!」

 ようやく自由の身になったカナタは、今まで見せたことのない全力ダッシュで応援者席へと駆けて行った。まあハズミ達も着いている頃だろうからよっぽどの事にはなるまいと、あっさりとケイの方へと向き直るレンだった。想い人が現れた途端人任せになる様は実に現金である。カナタの走り去って行った先を見て自分の兄弟を見つけたケイは、楽しそうにレンと並んで兄弟の下へと向かった。

「今日はユーリグにお饅頭リクエストしたから、レン君にもお裾分けしたげるね。美味しいんだから」
「それは楽しみですね。実は僕もお弁当作ってきたので、僕が作ったのも食べてくださると嬉しいです」
「え!うん、食べるよ、楽しみだなぁ」
「…そういえば今日ユーリグさんはいらっしゃらないんですよね」
「うん、そだよ。大事な実習があるって言ってたかな」
「実はこの前ユーリグさんから、『今日は僕ら兄弟が揃っているか?』ってメールが来てて、『学校が違うユイを除いて皆揃ってますよ』と返信はしたんですけど、ユイのことユーリグさん覚えていらっしゃらなかったんですかね?確かヒロさんもそれで来られないんですよね」
「うん、ヒロも授業あるからね、残念がってたよ。ユーリグがねぇ……ただ単にお隣兄弟の分って思うと、7人分ってイメージで一括りに思っただけじゃないかな?」

 ケイの言葉にそんなものかと納得して、それ以上の疑問は抱かずに2人は応援席で待つ兄弟達の下へと合流した。

 

「おべんっと、おべんっと、うれし〜な〜♪ユーリグさんのお弁当〜♪」
「良かったねーリク」
「言っとくけど、僕とレンが作ったお弁当もあるんだかんね。ちゃんとそっちも食いなよ?」
「うん!楽しみだな〜♪」
調子はずれな歌を歌うリクを支えて移動する一行は、遠目で見ていても微笑ましくなるほど平和だった。


お弁当を広げデュナン家兄弟の到着を待つマクドール家の面々の下に、そんな騒がしい一行が辿り着いた時にハズミはその光景を見てしまった。
「お待たせしましたー」
「みんなお疲れ様。リク、怪我は大丈夫?」
「はい〜。なんとか大丈夫です!」
そう言って、顔をあげたリクもその光景を見てしまいちょっと赤面してしまう。
「大丈夫ってひきずってるじゃないか。後でケイが到着したら少し看て貰え。そういう足の怪我は後から響くぞ」
「クラハさん…ありがとうございます」
「皆、飲み物はどっちが良いですか?」
紙コップを3人に手渡してオレンジジュースとウーロン茶を指差しながら訊ねるカイルに、とうとう堪えきれずにリクは聞いてしまった。

「あの…なんで、ロウウさんはルレンさんに膝枕をしてもらっているんですか…?」

ハズミはその光景を見てしまってから怖い雰囲気を醸し出して固まっているし、ナナトも赤面したまま固まっている。
何とはなしに自分の役目のような気がしたのだ。

「さっき、喘息の発作を起こしかけて。それで、ちょっと休ませてるんだ」
苦笑しながらルレンが答える。ただのセクハラかと思っていたリクには正直意外だった。
そんなに体の弱い人だったのかと、認識を改める。
「え?大丈夫なんですか?」
「さっき吸入したからもう大体落ち着いたよ。それにルレンの膝は気持ち良いしなぁ?」
挑発するようにニヤニヤしながら膝枕をして貰っているロウウにとうとうハズミの堪忍袋の緒が切れた。
「落ち着いたんなら、もう起きればいいだろ!?ルレンさんだって迷惑そうじゃないか!」
「待ってハズミ!一応相手は病人だよ!?」
「そうだよっ、落ち着いて!?」
喧嘩腰に無理矢理相手を起こそうとしたハズミを、ナナトと2人で慌てて押さえつける。
「だって、だってさぁ!」
なんだよあれ、セクハラじゃん!!とハズミが騒ぐのも無理からぬ話なのだ。
リクだって気持ちはわからなくもない。


「カイルさ〜〜〜〜んvvv …って微妙に修羅場です?」
「カナタ…;」
あわよくばカイルに抱きつこうと思っていたカナタは、その場の雰囲気に動きを止めた。
そこへ少し遅れてレンとケイ、アオイもやってくる。
「おまたせ〜。あれ?ロウどうしたの、また具合悪いの?」
「ハズミ、どうかしたのか?」
その場の状況を見て、大体の見当がついたのかレンは1人こっそりと溜息をついた。


「さて…と、全員揃ったようだしお弁当を頂くとしようか。ルレン、膝ありがとうな」
「どういたしまして」
マイペースな2人やお昼を心待ちにしていたクラハに促されてそれぞれが思い思いに席に着く。
ハズミも長兄の姿を見て落ち着いたのか、ブチブチ言いながらも席に着いた。
視線はロウウを睨みつけたままである。



広げられた重箱の中身に一斉に歓声があがる。
お稲荷さんに海苔巻き、茶巾寿司、から揚げに厚焼き玉子、エビフライ、シリコンケースに入った小さめのグラタンなんかも人数分用意されていた。他にもカットフルーツやお饅頭など、一晩で作るのは大変だったのではないかと思われる料理が、重箱10段分にギュウギュウに詰まっていた。
「すごい。これユーリグさんが1人で作ったんですか?」
「流石に量が多かったから、僕も少し手伝ってます」
「えぇ!?カイルさんが作ったおかずはどれですか!?できれば独り占めしたいです!!」
「何言ってんだ、バカナタ!お前はウチの弁当でも大人しく食ってろ!」
ハズミが広げたレンとハズミ作のお弁当にケイが歓声を上げる。
「わぁ、そっちも豪華だねー」
「これだけあると食べ甲斐があるな」
「これがユーリグさんのお饅頭…」
「美味しそうだな」
それぞれに感想を漏らしつつ、賑やかにお昼が過ぎていった。



用意されたお弁当をほぼたいらげ、全員が落ち着いた頃。
時計を見ていたアオイがおもむろに立ち上がった。
「そろそろ集合時間なので先に失礼します。ご馳走様でした。」
「いえいえ、お粗末さまでした。アオイ君は何に出場するの?」
「これから応援合戦に出るんです」
ケイの質問に少し照れながらアオイが答えると、嬉しそうにハズミが補足説明を入れてくる。
「アオイちゃんは紅組の団長なんですよー!袴を穿くんですよ〜」
「そうなんだー。準備に時間がかかるから集合早いんだね」
と、和やかに会話をする弟達に苦笑しながら羽目を外し過ぎないように釘を刺してアオイは集合場所へと向かった。

 

―――ドン、ドンドン!ドンドンドドン!!

和風にアレンジされた、リズミカルな曲に合わせて和太鼓が鳴り響き、黒い長ランが一糸乱れぬ動きを魅せる。
中でも一際目立つのは、袴姿の紅組団長だった。
言わずと知れた、デュナン家長男の姿だ。

「きゃ――――!アオイちゃんかっこいぃ――――!こっち向いて――――ッ!」
「ハズミさんのキャラが変わってますーーー!!っていうか、写メです写メーー!!」
「周りの写メ率もすっごいんだけどー!?;」
「うわぁ…カッコイイよね〜」

動画も撮れ動画もーー!!と興奮するハズミに、ロウウのなんとも言えない視線が刺さっている。(いやむしろ爆笑しているのだが…)
―――というか、デュナン家がまだ自分達の席に戻っていないのがなんとも言えない。まあ、お昼後かつ、全体数からすると参加者が少ない競技の為、きちんと席に戻っていない生徒の方が多いので問題はないと言えばないのだが。(しかしユーリグがこの場にいれば、確実に何か言っただろう。)

「隣も仲が良くて何よりだな。」
「そうですね、」

うむうむと満足そうに競技とすぐ側でのエールを見つつクラハが言った。
それにほのぼのと頷きを返していたカイルだったが…

「カイルさん!カイルさん!!僕にもアオイ兄ちゃんと同じ遺伝子が流れてるんですからっアレくらいカッコよくなると思いますか!?主に身長的な意味で!!
「ええっ!?;」

興奮状態のカナタに詰め寄られ、困った。
正直に何とも言えないとは答えられない。

「……………」
「(わくわく)」
「………………ぅ、ん…」
「うっしゃーーッッ!!」

目をそらして頷いたカイルの返答に、カナタはガッツポーズをとった。
子供の夢を壊さない、その為の虚言は仕方がないものなのかもしれない…とカイルは一つまた大人へ近付いた。(その肩をクラハがぽんと叩いている)

「そうと決まれば早速応援団の長ランを剥がしてきますよーー!!」
「ええっ!?カナタ絶対サイズ合わないよっ!?;」
「どちくしょーーー!!(怒泣)」

そしてナナトからの嘘偽りない正直な返答に、少年も一つ大人になった…。
後、勿論応援合戦は紅組の圧勝になった。






とりあえず、競技時間に入った為にクラスの指定席へと一同は戻っていた。(カナタだけは無理矢理引きずられて…)

「さて…さっきの応援合戦で紅組がやや優勢な結果に戻って来てますねー。後種目何残ってましたっけ?」
「昼からは時間のかかる競技が多いから種目は残ってませんけど…うん、十分逆転されるかもしれない競技数。」

種目表を確認しつつ呟くレンの言葉に、ハズミとの勝負以外も勝ちを狙いに行っていることをカナタは理解した。
カイルとのお昼やらなんやらで、すっかりゼロに近付いていた闘争心が、シャキーンと背筋を伸ばす程に回復する。

「僕は後は残りの出番全体競技だけですし〜…あああっ;カイルさんに組体操で上に乗っけられている僕の姿を見られたくないですっ…!」
「組体操は得点はないですから。」

ホンキで勝利を狙う兄弟の言葉にカナタは沈黙した。(だってヘタに水差すようなコメントしたら危ないですから!BYカナタ)

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