**リレー企画06**

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「………昼飯の直後に騎馬戦って……軽く嫌がらせだよな………」
「だよねぇ……」
 ハズミとナナトが、同時にため息をつく。


 現在、トラック内では女子による騎馬戦が行われている。
 女の子の騎馬戦は、皆きゃあきゃあと声を上げそれは可愛いものだが、次に控える男子騎馬戦はガチである。

 ハズミ、ナナト、そしてリクは、リクを先頭に騎馬を組み、ハズミを乗せる予定だったのだが、いよいよリクの足がひどくなってきたため、先頭をナナトに切り替えることになった。


 補充要員を一人入れ(四人一組のため、クラスで一人二人は半端がでてしまう)リクは残念ながらリタイアとなる。

「こ、怖いな〜…騎馬の先頭なんて……」
「ナナト、あんま動かないでいいからね。こっち来たやつだけ倒すから」
「ハズミ心強い……!でも相手を殴らないようにね!」
「……お前僕の事なんだと思ってる?」



 ぴ――――。

 競技開始を告げるホイッスルが、昼下がりの空に高々と鳴り響く。

「ハズミ!ナナト!頑張れェ――!!」
 競技に出られないリクは、せめてもと力一杯の声援を送る。

「小さくて軽いからって理由で上に乗っけられるなんて……屈辱です……!」
「別に屈辱を感じるような事じゃありませんよ。なんなら代わりましょうか?」


 一方、紅組陣営。

 レンを先頭に組まれた騎馬の上で、カナタがぶすくれていた。
「結構です!馬にされるのもゴメンです!」
「騎馬戦には騎手か馬しかないんですけどねぇ」
「わかってます!言いたいだけです!!……とはいえ、騎馬戦は腕が長い方が有利なんですよね〜…特に団体戦の時は」
「……ハズミの騎手は変わらず、騎馬の先頭がナナトになってますね」
 向かいあって並ぶ白組の騎馬の中にハズミとナナトを見つけ、レンがぼそりと呟く。
「腕の長さはともかく、ハズミさんは握力アホみたいにありますからね!捕まったら逃げられません!!」
 カナタは大きく舌打ちすると、左右に視線を走らせる。

 ――と、その目が何かを捉える。

「でも、団体戦なら向こうが追いかけてこなければ、ハズミと当たるとは限りませんし」
「……いーえ。せっかくなので兄弟の手で引導渡してやりましょう」


「やる気のある奴は突っ込んでくるから、外周回って後ろにつこう。ゆっくりでいいから」
「う、うん…!」
 騎上からの指示に、ナナトは緊張した面持ちで頷く。

 移動するその間も、ハズミ騎は何騎かを撃破していく。
 ようやく乱戦を抜け、フィールドであるトラックの隅が見えた。――その時だった。

「――あ……!」
 前方に、立ち塞がるように現れた紅の騎馬。
「……アオイちゃん!」
「アオイ兄……!」
 ハズミとナナトが同時に声を上げた。
「……ハズミ……ナナト……」
 再び体操着に着替えたアオイが、騎手の証でもある長いハチマキをたなびかせ、渋い表情をしていた。
「ハズミ……どうしよう、アオイ兄になんて勝てるの!?」
「…………っ」

 戦うべきか、それとも逃げるべきか。
 ハズミの中で峻遵が生まれる。

 その瞬間、ほんの刹那。
 周りへの警戒が緩んだ。

「スキありゃ――――!!」
「ぃあぁああああ!?」
「――――え?」
 すぱっ!と、カナタの右手が、ハズミのハチマキを取り去る。
「アオイさんをぶつければ絶対隙が出来ると思いました――!案の定ですよふはははは――!!」
「ごめんなさいアオイ兄、騙すみたいな形になってしまって!」
 白いハチマキを掲げ高笑いするカナタと、それを乗せたレンの騎馬が乱戦の中へと消えていく。
「……その、すまない……兄弟は兄弟の手で倒そう、とカナタに言われて……まさかはさみうちにするとは……」
 突然の事に固まっていたアオイが、我に返りあたふたと頭を下げる。
「……いっ……いい……アオイちゃんは騙されたんだから……覚えてやがれあのアホ……!!」
「て、撤収撤収……!」
 怒りに燃えるハズミを乗せたまま、ナナトの騎馬はそそくさとフィールドを後にした。


 因みに、乱戦の間にカナタは別の騎馬に倒され、アオイ騎のみが個人戦に進むこととなる。




「はっはっは!今のはカナタの作戦勝ちだな。ハズミは少々ブラコンが過ぎる」
「ハズミは兄弟思いだからねえ」
「しかし、団体戦で消えてしまったのは残念だな。個人戦での一騎打ちが見たかった」
 スタンドでは、マクドール家の面々がそれぞれ感想を述べていた。

「しかし騎馬戦といえばアレを思い出すな。ルレン対クラハの一騎打ち」
「えっ、そんなのあったの!?」
「高校の体育祭ですか!?」
 前の席に座っていたケイとカイルがくるりと振り返り、身を乗り出してくる。
「ああ。一年の時だったか……たまたま私とルレンはチームが分かれていてな」
「お互いに騎手だったんだよね」
「時間一杯、きっかり五分の名勝負だったんだぞ?」
「そ、それで!?」
「どっちが……勝ったんですか!?」
「どちらも一歩も譲らず、時間切れのホイッスルの直前、同時にお互いのハチマキを取ってドロー。……この子ららしいだろ?」
 何故かロウウは、そう言うと左右に座る双子の肩を抱き寄せ満足げに笑った。

「えへへ。もう一回やってみたいねぇ、あれ」
「そうだな」
 ロウウの胸元に抱き寄せられた双子は、頭を寄せ呑気に笑い合うのだった。

 

「――という事があってな。体育祭というから思い出してしまった」
「へぇ、ルレンがなぁ」

 同時刻、ユウとユイは連れ立って家へと向かっていた。当初の話題は本日開催されているユイの兄弟達の体育祭だったのだが、今はユウの体育祭の思い出話へと移っていた。

「ルレンとクラハの騎馬戦の話の他には?ユウが1着取るとかは普通にありえそうだから、もっと他のハプニング的なやつを期待」
「そんなのを期待されても。ハプニングか……あれかな」
「お、あんのか。どんなだ?」
「ロウ、いるだろう?ちょうど騎馬戦の時と同じ体育祭、当時ロウとはクラスも一緒でな。ロウはちょっと身体が弱かったのもあって、借り物競走にエントリーしてたんだよ。あれなら速さを競うというのではないし、運の要素も強いから無理しないで済むだろう?」
「借り物の内容にもよると思うけどな。鉄アレイとか砲丸とか当たったらキツイだろ」
「まあそんな借り物があればだけどな。ロウと一緒の競技に出たいなぁと思っていたから、僕も一緒にエントリーしていたんだ。そしたらちょうど組まで一緒になってな、スタートして進んだ先で借り物が書いてある紙を拾う訳だ。…何が当たったと思う?」

 そう言ってユウは悪戯っぽく笑ってみせた。実に楽しそうにユイの答えを待ってくれているのだ、その期待に応えようとユイも考えを巡らせる。

「え…生卵とか?」
「残念、はずれだ。正解はロウが『眼鏡』で僕が『ヘアゴム』」
「…………うん?」
「お互いがお互いの欲しい借り物を身に着けている訳だろう?思わず普通に二人で手を繋いでゴールしてしまったよ、12フィニッシュだったな」
「まあある意味ハプニングだけどさぁ、いくらなんでも出来すぎだろ」

 ユウが思い出話を披露し終えたところでちょうどユウの家の門前に辿り着いた。そしてもう一人の連れ――二人の先を歩き、ここまで黙って二人の話を聞いていたテッドは二人の方へと振り返った。

「それ日頃の行いってやつなんじゃねぇの?」
「日頃の行いっつってもさぁ、ユウはともかくロウウはどうだろ。むしろあの人が何か仕込んだ可能性のが高くね?」
「あぁ、それは一理あるな」
「そこで同意!?……二人のロウへの印象って一体」
「つか、何で今ここにテッドもいんだよ、あんたの家大学の近くなんじゃなかったか?」

 ユウと待ち合わせていた駅で、一人ではなく二人と合流する羽目になったユイは、非常に遅ればせながらずっと道中思っていた質問を投げかけた。

「いいだろ。ユウに今日遊びに行っていいかーって尋ねたら、構わないって返事貰ったんだからさ」
「あぁ、テッドもそういえば引越ししてから招待してなかったなぁと思って。今日は僕がちゃんとおもてなしするんだからな、二人とも遠慮なく上がってくれ」
「まあユウがそう言うんなら…。あ、俺荷物だけ置いてくるわ。先行っててくれ」
「あぁ、分かった。それじゃあまた後で」

 軽く手を挙げてマクドール邸の隣の玄関のドアを開くユイの背中を見送る。建物の中に完全にユイの姿が消えたところで、テッドはしみじみと呟いた。

「……いやぁ、あいつホントにお隣さんなんだな」
「最初からそうだと言っているじゃないか」

 何を今更と自宅の玄関の鍵を開け、ユウはテッドを我が家へと招き入れた。新居に移ってから訪ねるのは今日が初めてだったテッドである、室内を物珍しそうに見回していた。

「あ、この絵ユウのだろ。食べ物って、クラハからのリクエストってところか?」
「ああ、10月はカボチャ。……で、テッド。今日はユーリグに頼まれたのか?」

 ユウはキッチンにて棚を物色しながらテッドへと尋ねた。テッドは少しバツが悪い様子で頭をかき、ユウ相手の隠し事は無理かと判断して開き直った。

「……ご明察。ユーリグ本人には黙っててやってくれよ?」
「やっぱりか。朝はどうもこちらの方を気にしていたようだったからな。アトリエに用があるとは言ったが、篭っている訳ではないからちゃんと来客があったら応対するし、留守番だってできるのに…そんなに信用がないのだろうか」
「(ユーリグが心配してんのはそこじゃないと思うぞー)」

 弟に子供扱いをされているのだろうかと思い悩む親友の、聡いんだか鈍いんだか分からないズレっぷりに、思わず頭を撫でてやるテッドだった。やっと見つけた茶葉の缶を手にした一方で、何故撫でられているのかが分からないユウは首を傾げている。遅れて家を訪ねてきたユイがそんな二人の姿を見て、マクドール邸はにわかに騒がしくなるのであった。

 
「……何かモヤモヤするんだけど気のせいかなぁ」
「ケイさん、どうかしました?」
「ううん、何でもないよ、カイル。次の競技って何だっけ?」
「次は…100メートル走の準決勝みたいですね。4組走って各組の上位2名が決勝に進むらしいです」
「やたっ♪レン君とハズミ君残ってるんだよね、見たかったんだー」

 何故だか心に引っかかったモヤモヤは気のせいだと思う事にして、ケイはグラウンドへと目を向けた。

 

「いよいよですね、レンさん」
トラックの集合場所にいるハズミを見つけ、すぐ隣にいたレンを激励しようと声をかけた。
同じタイミングでハズミを見つけたレンもまた、感慨深い顔で1つ頷くとゆっくりと歩き出す。
待ち望んだ対決が、もうすぐそこまで迫っている。
「まだですよ、準決勝で当たるかどうかはわかりません。集合してからのくじ引きで組分けになるんですから」
「どっちにしろ、レンさんとハズミさんなら決勝まで楽勝でしょう?後腐れのないように頑張って下さいね」
準決勝まで残っている陸上部員を含めた選手一同に、喧嘩を売るような言葉を吐いて、カナタはレンを見送った。


その後ろ姿がかなり小さくなってから、気になっていた事をポツリともらす。
「レンさん、頑張るのは良いんですけど…本当に良いんですかねぇ?」
面倒な事になると思いますよと呟いて、鬼のいぬ間に観客席にいるカイルを観察しだす。
流石に観客席に乱入はレンにばれた時が怖いと踏んだのだろう。
ただ、双眼鏡での本気ウォッチングだったりする。
今は目先の兄弟同士の対決よりも、大好きで大切な恋人の姿を余さず目に焼き付けておきたい!
カナタは自分の欲望に忠実だった。





くじ引きの結果、幸か不幸か2人の対決は決勝まで持ち越しとなった。
他の選手をかなり引き離して1着でゴールした2人の走りに、ケイはしきりに感心していた。
「やっぱりハズミ君は速いね、フォームも凄く綺麗だし。高校でも陸上続けてくれれば絶対凄い選手になるのにー」
「レンも速いじゃないか。ケイが仕込んでやったんだろう?」
「仕込んだなんて…走り方に少し癖があったからフォームを見てあげただけだよ。後はレン君の実力」
「次はそのまま決勝戦をやるんですね。」
ドキドキしますと言って胸を押さえるカイルは、生徒席から双眼鏡でずっとこちらを見ているカナタの姿に気付いていない。
ロウウは敢えて教えてやる事もないだろうと思ったが、わざとカナタとカイルの間に割り込んだ。
『お望み通りの対戦になって良かったな。』
唇の動きだけでカナタにそう伝える。視界の先のカナタは最初こそ割り込まれた事に悔しがっていたが、伝えられた一言に素直に頭を下げる。
…が、その一瞬後にはその場からどけと手でジェスチャーしている。
(人の嫌がる事はやってなんぼだろう…?)
ニヤリと嫌な笑みで応えてその場に居座ると、地団太を踏んで悔しがるカナタが見えた。可笑しくて仕方がない。
1人楽しげなロウウの様子に他の4人は不思議そうにしていたが、一瞬後には目の前で始まった100メートル走決勝戦に釘付けになった。
「始まった……」
固唾を呑んで結果を見守る。





「位置について……」
決勝戦出場選手がスタートラインでセットの体制に入る。
(とにかく今は集中…!)
「よーーーい…」
(ハズミに勝ちたいとか、ケイさんに良い所を見せたいとか…グチャグチャ考えていたらダメだ…!)
スッと前を見据えて、 スタートのピストル音が鳴り響くと同時に一斉に駆け出した。

見えているのはゴールだけ…のはずなのに…ハズミの背中が視界の端に映る。
後はただひたすらにゴールを目指して走った。
数秒の時間がイヤに長く感じる。





わぁっと歓声が聞こえた。


ハズミが持っているのは1位のフラッグ。レンが持っているのは2位のフラッグ…。

「……後一歩及ばなかったみたいですね」
悔しかったが全力を出しきったのだ。これが実力差だったのだから仕方がない。
息を落ち着かせながら、互いに健闘を讃えてがっちり握手をした。
「レンも速かったよ…、途中ヤバイと思ったもん。」

実に他の選手をぶっちぎって兄弟でワンツーフィニッシュを決めたのだ。
ロウウとの諍いやルレンの事もあって必要以上に本気を出してしまったハズミと、ケイのために走ったレン。
ここにいたって頭の痛い問題が蒸し返した事に気がついた。



「レンレン……明日から必死に逃げなくちゃね」
何からとは言わずに遠い目をしたハズミにレンもハッとした。
「そうですね…部活をやってる暇はないですから…」


色めき立っている陸上部の上級生が見えて、レンとハズミは明日からの学校生活に一抹の不安を覚えた。

 

茜色に染まる空の下、―――ついに長かった体育祭も終わり、閉会式が行われようとしていた。

「…ぷっ!上級生のマッチョな先パイ方に取り囲まれたレンさんとハズミさん面白かったですね〜(笑)」
「完っ全に意識飛んだよ!!」

顔を青ざめさせて叫ぶハズミに、カナタは大笑い、他の兄弟らは苦笑した。
…レンはと言うと、常時無言でコワイ。

「や〜でも、意外な結果になりましたね〜」
「こういう場合どうなるのかなぁ?」
「まさかねぇ…」
『そこー私語は慎むように〜!』
「「「はーい」」」

教員から注意を受けつつの閉会式の中、デュナン家兄弟らは微妙な笑みを浮かべた。
そう、ハズミとレンの対決はハズミが勝利したものの―――後の競技の結果が響いたのか、チーム単位ではレンとカナタ、そしてアオイの所属する紅組が勝利したのだった。

「やっぱり勝った方のチームに、だよねぇ」
「ハズミさんは1位になったからそれで満足なんですよね?」
「…何か含みがない?」
「深い意味はないですよ〜;」

懲りずにそんな会話をしつつ終わりの行進を終え、兄弟らは一旦教室へと戻った。
着替えやら荷物を取りに戻るのだ。

「あっ!」
「どうかしたの?」

そして、その戻った教室内でカナタが携帯を見て叫んだ。
そして、すぐさまクイックターンでダッシュ!

「カイルさんから家で待ってますってメールが来てます!!」
「て、コラァーッ!体操着のまま飛び出してんじゃないよー!」
「ていうかHR−!;」

カイルさんと一緒に帰るんです〜っ!!と暴れる末っ子をなんとか取り押さえ、無理矢理机に戻らせる。(ついでにもう使わないハチマキで椅子に縛り付けた)
ふー…と一息ついて、何事かとカナタの携帯を確認すると、確かにカイルから疲れてなければ皆で家へ寄って下さいというような内容のメールが入っていた。
「あ。僕の方にも来てた」
「え!?」
慌てて携帯を確認すると、うっかり見忘れることがないようにハズミやレンにもそれぞれからメールが届いていた。
急いで返信をするデュナン家兄弟らに、周りのクラスメイトらが「お前ら、着替えろよ…」と微妙な視線を注がれていたりした…。

「はっ…!勝ちって言うことで、カイルさんからの祝福のキスがもらえるかもしれないです…っ」
「やめて、怖い発言やめて。」
「確実に血の雨が降るよ!;」
「むしろ今日のことユーリグさんに報告されて、どんな目に合うか…」

もしかしてこのメール…連帯責任で呼び出しってことなんじゃ…
カナタ当人以外、全員がそう思ったという…。







そして、デュナン家五つ子はダッシュで帰宅した。(2人が暴走し、残り3人が抑える為に追走した結果)

「シャワー!汗臭い姿をカイルさんに見せるわけにはいかないんですよ!シャワーは僕のものですー!!」
「あー!ずるい!僕だって早くユーリグさんの所へ行きたいのに!!」
「お前らもーっ!まとめて入れッッ!!」
「体育祭で、つ、疲れてるのに家まで走る、なんて…っ;」

運動後の男子学生5人に対し、風呂は1つ。
ここでも仁義無き戦いが繰り広げられることになった。

「大体!リクさん足の怪我どうしたんですか!」
「わ、忘れてた…!;」
「確実に悪化させてますよ!先入ったらどうですか。」

(うるさかった為)2人まとめて脱衣所に押し込められた結果、1人が脱いでいる間に1人が素早くシャワーを浴びるという形で決着がついた。
…泥まみれになったの体操服と脱衣所に、これは片づけが大変だなぁと他人事のように思ったカナタだ。

「そういえば、リクさーん」
「えー?なにー?」

シャワーの水音の中、何の気なしにカナタは話しかける。待ち時間が暇なのだ。

「何かレンさん珍しくへこんでませんでした〜?」
「………マッチョに囲まれたせいじゃない?」

ああ、なるほど。とカナタは納得しつつ、珍しく勝負事に燃えた上に、ハズミとの決着以降冴えた突っ込みのなかったレンの姿を思い出し、「青春ですかねー?」と首を傾げた。

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